2020 年 76 巻 1 号 p. 233-242
本論文は,令和元年東日本台風(令和元年台風第19号)を対象に利根川上流域のダム群による八斗島地点の治水効果を検討したものである.ダム群の治水効果を検証するため,対象地点においてダムがある場合とない場合によるピーク水位の比較を行った.その結果より,ダム群の洪水調節によって対象地点において最大0.9m程度の水位低減効果があった.さらに,ダム群の中で最も治水効果の大きかったダムは八ッ場ダムで治水効果の約60%を占めており,最大で約0.6mの水位低減効果があったことがわかった.また,八ッ場ダムは令和元年10月1日から試験湛水中であったため,貯水池に余裕があり,洪水の約100%をダム貯水池で貯めこんだが,規則通りの洪水調節を行った場合においても,ほとんど同様の治水効果が得られることがわかった.