2020 年 76 巻 2 号 p. I_235-I_240
令和元年台風第19号に伴い長野県千曲川で発生した洪水に対して,開発中のアンサンブル洪水予測手法を適用し,洪水流出の予測可能性を検討した.本手法は,領域アンサンブル予測による降雨予測と,降雨流出氾濫(RRI)モデルを組み合わせたものである.本手法により本事例を再現したところ,洪水水位と洪水到達時刻を洪水発生5日前から再現することができた.特に,洪水到達の1.5~2.5日前の予測シミュレーションでは,水位を1m以下の誤差で,洪水到達時刻を3時間以内の誤差で再現しており,過去の研究に比べて高い精度が得られた.これは,境界条件として用いた気象庁の全球モデルによる台風進路の予測精度が,本事例では特に高かったことを反映していた.今回の結果は先進的な洪水予測の可能性を示した.