2020 年 76 巻 2 号 p. I_241-I_246
領域規模の大気海洋相互作用が海洋窒素循環に与える影響を検証するため,チリ南部域を対象に領域海洋生態系モデルROMS-NPZDによる再現実験を行った.初めに領域大気モデルRSM及び領域大気海洋結合モデルRSM-ROMSの検証を行うと,RSM-ROMSは地上変数観測の季節変動と日日変動を捉えており,また大気海洋相互作用のフィードバックによりRSMと比べて誤差が低減したが,逆に海面水温の誤差は拡大した.次にRSM及びRSM-ROMSそれぞれの大気場をROMS-NPZDの境界条件として用いた実験(UCPL実験,CPL実験)を衛星観測を用いて検証すると,CPL実験はクロロフィルa濃度の年平均からの偏差の傾向をつかんだものの,UCPL実験がもつ水平分布の誤差が拡大した.また大気海洋相互作用のフィードバックが海中の光環境を通じて循環場に影響を与える可能性が示唆された.