土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
特集号(地球環境)論文
世界を対象とした気候変動および気候変動緩和策による貧困影響の評価
丸田 有美藤森 真一郎高倉 潤也大城 賢高橋 潔長谷川 知子
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2023 年 79 巻 27 号 論文ID: 23-27040

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抄録

 気候変動は経済損失をもたらし,貧困を増加させ得る.しかし,気候変動緩和策もまた,経済損失をもたらし貧困を増加させ得る.既往研究では,気候変動および気候変動緩和策による貧困への影響を同時に考慮した評価はなされていない.本研究では,世界を対象に,これらが貧困に与える影響を定量的に評価することを目的とした.その結果,パリ協定の2℃目標を達成するシナリオで,気候変動による貧困への影響は低減できる一方,気候変動緩和策による影響は大きくなり,短期的には2600-4200万人,長期的には200-1000万人程度,2℃目標を達成しないシナリオより貧困人口が多くなると明らかになった.これは,世界一律の炭素税を用いた気候変動緩和策が,低所得国に大きな経済損失をもたらすことが要因だと考えられる.気候変動緩和の方策に検討が必要である.

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© 2023 土木学会
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