2024 年 80 巻 12 号 論文ID: 24-00161
ダム再開発や事前放流操作など気候変動に備えたダム治水能力の増強を進めるうえで,既設ダムが最大限に発揮し得る治水効果を知ることは有効である.本研究は将来の流入量予測精度の向上により洪水期間中のダム流入量が得られ,ある程度柔軟なダム操作が可能である状況を想定し,d4PDF 4度上昇シナリオの極端洪水事例に対してダム操作を数理的に最適化した場合にダムの既設容量が発揮する最大治水効果を評価した.その結果,最適操作による治水効果は特に相当雨量が150mm程度以上のダムにおいて,容量増加に匹敵する治水効果を発揮することがわかった.ダム流入量予測を用いたダム操作が実現すれば,気候変動下でもダム再開発や事前放流等と併せて治水効果が大きく向上し得ることを示した.