2024 年 80 巻 2 号 論文ID: 22-00313
本研究は,高齢者を対象に2016年から2018年にかけて取得した健康保険の給付情報に基づく医療費データと,GPSログデータおよび歩数データを用いて,1日平均歩数と医療費の関係を明らかにし,さらに居住地周辺の都市環境の違いおよび外出行動の変化が医療費に及ぼす影響を明らかにした.
まず,歩行量と医療費の関係について,交差遅延効果モデルにより,医療費が低い人の歩数が多くなる傾向がみられない一方で,歩数が多い人の医療費が低くなる傾向があることを明らかにした.さらに,居住地周辺の都市環境の違いおよび外出行動の変化が歩行量の変化を通して医療費に及ぼす影響を,共分散構造分析で定量的に分析し,例えば商業地区内に居住することによる医療費の違いや,自転車および公共交通による中心市街地への訪問頻度の変化による医療費の変化を示した.