土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
80 巻, 2 号
通常号(2月公開)
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
構造工学,地震工学,応用力学
論文
  • 樋口 幸太郎, 新延 泰生
    2024 年80 巻2 号 論文ID: 23-00040
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル フリー

     本論文は,骨組構造物を対象に,saddle point行列を係数行列とする応答解析から応答値(応力および変位)を直接求め,さらに応答値に対する各部材の寄与も同時に求める計算手法を提案し,応答値に対する各部材の働きを陽的に表す考え方を述べている.また,固有値解析を基に固有振動数に対する各部材の寄与解析も行なっている.また,設計等で応答感度係数が必要な場合,提案法で求められる寄与量を寄与変数(論文では部材剛性としている)で割れば直ちに求められる.本論文で述べる寄与解析および感度解析の定式化は,従来は変位を変数とする剛性方程式から行なっていたが本論文では,構造物の釣り合いの三つの基本式から応力を削除することなく行なっている.なお,論文中の寄与はすべて外力仕事に対する各部材の寄与を考えている.

  • 松保 重之, 畑中 章秀, 田中 洋
    2024 年80 巻2 号 論文ID: 23-00164
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル フリー

     長大橋のねじれフラッター解析に伊藤型確率微分方程式を適用し,ランダムな風荷重外力として,乱れ強さと乱れスケールをパラメータに有するカルマン型スペクトルを入力してフラッター限界風速を計算した.非定常空気力係数(Flutter Derivatives)は乱流中での計測値を適用した.乱れ強さと乱れスケールの組み合わせにより,フラッター限界風速は変化するが,乱れ強さが大きく,かつスケールが大きい場合には限界風速が低下する結果が得られた.本論文は,限定された条件下で得られた数値結果ではあるが,橋梁のフラッターに関する耐風性について慎重な検討の必要性を示唆している.

河川・海岸・海洋工学と水文学
論文
  • 賀 放, 蔡 飛
    2024 年80 巻2 号 論文ID: 22-00281
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,天然ダムの決壊によるピーク流量における事例データを収集したうえで,重回帰分析およびマルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)によるベイズ推定を用いて,天然ダムの決壊によるピーク流量の統計的推定を行った.ベイズ推定において,事前確率と尤度関数を構築し,MCMCにより事後確率分布を求めた.また,残差分析を行い,異常値を除外してから統計的推定も行った.これらの手法で得られた推定結果の比較を行い,統計的推定結果の信頼性を検証した.また,統計的推定の結果を用いて,天然ダムの決壊によるピーク流量をある信頼度で予測する方法を示した.これにより,天然ダムの決壊に備えて避難範囲などを適切な信頼度をもって的確に決定することが可能になる.

  • 鈴木 博人, 植村 昌一
    2024 年80 巻2 号 論文ID: 23-00090
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,1976年から2020年を対象に気候変動に伴う大雨の増加が大雨時の列車運転規制に与えた影響を評価した.東日本旅客鉄道株式会社の管内では,大雨による列車運転規制頻度および時間は,増加傾向が有意水準5%で有意である.その頻度は10年あたり15%程度,時間は20%程度増加した.また,1976年から2005年の30年間(前期)と2006年から2020年の15年間(後期)における列車運転規制頻度および時間の差は,有意水準5%で有意である.その頻度は後期が前期に比べて1.4倍程度,時間が1.7倍程度大きい.これらの傾向を地域別にみると,東北が関東甲信や北陸に比べて顕著な傾向にある.

地圏工学
ノート
  • 吉原 隆, 番場 恵梨子, 海野 寿康, 江守 辰哉, 上野 一彦
    2024 年80 巻2 号 論文ID: 23-00104
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル フリー

     2021年8月に小笠原諸島南硫黄島付近の福徳岡ノ場で発生した海底火山噴火により大量に軽石が噴出,漂流し,主に西日本の港湾施設などに堆積した.本稿では,それら海底火山由来の漂流軽石に対して単粒子破砕試験,三軸試験など力学試験を実施し土粒子単体の強度や集合体である土の力学特性を把握した.載荷に伴う破砕があるため軽石は静的載荷試験により得られる破壊包絡線を一義に定義することが困難であり,拘束圧の増加に伴い見かけの粘着力,見かけの内部摩擦角は増減する.また試験後の粒子破砕状況を確認したところ,等方圧密のみでは顕著な粒子破砕は生じず,せん断において破砕する結果となった.

  • 近藤 知輝, 岡林 宏二郎, 橋村 元気, 沖田 勝俊
    2024 年80 巻2 号 論文ID: 23-00131
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル フリー

     2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震を契機に,港湾施設の耐震化整備が進められている.港湾施設は,災害時の被害軽減だけでなく復興作業の拠点や水産業などの経済基盤を有しており,迅速かつ合理的な整備が求められている.そこで筆者らは,二重鋼矢板式岸壁の中詰め土で液状化を起こしていることに着目し,地盤内の過剰間隙水圧低減のため透水性の高い礫材を詰めた土嚢と透水性鋼矢板による対策を遠心力模型実験により検証した.実験結果から,土嚢の排水効果により過剰間隙水圧の発生が抑制され,透水性鋼矢板による過剰間隙水圧の消散時間短縮効果が確認された.また,液状化層を土嚢に置換することで,矢板背面の地盤支持力の向上による矢板の変形抑制効果も確認された.

土木計画学
論文
  • 深谷 泰己, 平田 輝満, 根本 敏則
    2024 年80 巻2 号 論文ID: 22-00149
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル フリー

     高速道路SA/PAにおける大型貨物車両の駐車マス不足が深刻化する中で,欧州地域での混雑対策として出発時刻管理により駐車容量を拡大するコンパクトパーキング(CP)が実証実験されている.本研究では,CPの我が国への導入が未だ検討されていないことや,駐車容量の逼迫により労働基準法で定められた8時間以上の休息を行う貨物車両に駐車スペースを提供できていない実態を踏まえ,CPを活用して8時間以上の長時間駐車を優遇する駐車シミュレーションの開発を行った.開発したシミュレーションを活用して海老名SA(上り)をケーススタディとして分析を行い,出発時刻表示方法やCPマス数,また出発時刻の順守率の視点から,CPによる容量拡大効果や希望出発時刻との乖離度合いについて定量的に評価を行った.

  • 岡部 翔太, 井上 聰史, 稲村 肇
    2024 年80 巻2 号 論文ID: 22-00291
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル フリー

     首都圏において2013~2019年に建設された延床面積1万m2を超える大規模物流施設に着目し,立地動向,発生・集中交通量,物流施設が高速道路交通量に及ぼす影響を定量的に分析し,以下の結論を得た.(1)不動産事業者が物流不動産事業へ本格参入し2013年以降に大規模物流施設が増加,(2)大規模物流施設は圏央道の神奈川~埼玉区間等に集積,(3)集配送機能に特化した大規模物流施設からの発生・集中交通量は188台/日・万m2あり,マルチテナント型では更なる上振れの可能性あり,(4)大規模物流施設の延床面積1万m2あたりの高速道路交通単位増加量は約120台/日,(5)圏央道の神奈川~埼玉区間においてエリア内々交通量が増加,(6)地方着トリップに関して圏央道の神奈川~埼玉区間が物流結節拠点として一体的に機能.

  • 鎌田 佑太郎, 松中 亮治, 大庭 哲治
    2024 年80 巻2 号 論文ID: 22-00313
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,高齢者を対象に2016年から2018年にかけて取得した健康保険の給付情報に基づく医療費データと,GPSログデータおよび歩数データを用いて,1日平均歩数と医療費の関係を明らかにし,さらに居住地周辺の都市環境の違いおよび外出行動の変化が医療費に及ぼす影響を明らかにした.

     まず,歩行量と医療費の関係について,交差遅延効果モデルにより,医療費が低い人の歩数が多くなる傾向がみられない一方で,歩数が多い人の医療費が低くなる傾向があることを明らかにした.さらに,居住地周辺の都市環境の違いおよび外出行動の変化が歩行量の変化を通して医療費に及ぼす影響を,共分散構造分析で定量的に分析し,例えば商業地区内に居住することによる医療費の違いや,自転車および公共交通による中心市街地への訪問頻度の変化による医療費の変化を示した.

  • 森 直之, 髙見 淳史, パラディ ジアンカルロス
    2024 年80 巻2 号 論文ID: 22-00336
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル フリー

     東京都市圏郊外部で1960年代以降開発された丘陵住宅地では,高齢化が進み移動に不自由を感じる住民が多くなっており,公共交通の利便性向上が求められている.本研究では横浜市金沢区を対象に,代謝的換算距離の概念を援用して地形と高齢者の歩行速度を考慮し,バス停へのアクセシビリティを評価した.その結果,最寄りバス停への代謝的換算距離は道路距離に比べて平均約1.62倍長く,標準偏差は約1.66倍大きくなることを明らかにした.また,バス停の300m到達圏域を算定したところ,直線距離到達圏域の人口の約57%が代謝的換算距離では到達圏域外となり,一般に行われている直線距離での評価は不便地域の人口を大幅に過小評価していることを示した.さらに,これらの結果に基づき,横浜市の地域交通施策の方向性について議論した.

  • 唐 銘陽, 栗原 剛
    2024 年80 巻2 号 論文ID: 22-00354
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル フリー

     持続的な離島振興を目指すために,政府や地方自治体は離島地域への支援政策を展開している.その効果を検証するためにはエビデンスを重視した政策評価の仕組みが必要である.本論文は,離島振興政策の中で,観光に関する政策に着目し,宿泊施設を対象とした政策をケーススタディとして政策効果を定量的に評価することを目的とする.本論文では,はじめに観光分野に関連する離島振興政策について,全国網羅的に整理した.次に,整理した政策項目の中から宿泊施設への政策を抽出し,宿泊政策の有無と政策実施前後の宿泊収容人数の増減との関連についてPSM-DIDを援用して実証した.その結果,「宿泊施設の充実」施策を行った離島は,施策無の離島と比べて宿泊収容人数が66%増加したことが明らかになった.

  • 宮野 夏碧, 神田 佑亮, 小倉 亜紗美
    2024 年80 巻2 号 論文ID: 23-00016
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル フリー

     無信号横断歩道で,歩行者が待っているにも関わらず,車両が停止しない問題が近年指摘されている.無信号横断歩道における安全な横断では,歩行者がドライバーに対して横断の意思を示す能動的なコミュニケーションが車両の停止に影響を与えると考えられる.その際,挙手に限らず,歩行者の全ての挙動が車両の停止に影響し得る.加えて,車両が停止した場合,歩行者が会釈等により感謝の意を示すことが,今後の歩行者とドライバーとの協調関係を深める上で必要であると考えられる.

     上記のような課題認識から,歩行者の能動的なコミュニケーションが車両の停止に与える影響を定量的・統計的に分析した.分析の結果,歩行者が合図を送り,横断の意思表示を行うことが安全な横断環境のために重要であることが明らかとなった.

  • 氏家 魁斗, 小池 淳司, 瀬谷 創
    2024 年80 巻2 号 論文ID: 23-00041
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル フリー

     医療の均霑化とは,医療サービスの地域格差をなくし,全国どこでも誰もが等しく高度な医療を受ける権利を享受できるようにすることを指す.医療の均霑化政策の具体的な検討のためには,地域の医療サービスの需要及び供給に関する将来予測が欠かせない.そのため,予測モデルの開発が喫緊の課題となっている.本研究では病院統廃合等の供給面の検討材料として重要となる集中患者数に着目し,パーソントリップ(PT)調査データを活用しながら,重力モデルに基づく簡易な地域別将来集中患者数予測モデルの提示を行うことを目的としている.兵庫県を対象に実際にモデルを構築し,集中患者数の将来変化を可視化した結果,都市部においては高齢化による患者数の増加があるものの,多くの地域で減少が顕著であることが示された.

  • 平野 勝也, 大西 明日香, 和田 裕一
    2024 年80 巻2 号 論文ID: 23-00109
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル フリー

     景観論争の頻発により風力発電施設の正確な環境影響評価が求められる中,現在の評価基準では,風車は回転する構造物であるという観点が議論されていない.本研究では風車のブレードが回転する運動による動的誘目性という観点から,簡易的なモデルと風景モデルの双方を用いて,視覚探索と瞬間視に関する3つの実験を行った.この結果,風車が静止している時と風車が回転している時では凝視と瞬間視のされ方に差異があらわれ,動的誘目性による視覚的注意の捕捉が示唆された.

  • 功刀 祐之
    2024 年80 巻2 号 論文ID: 23-00146
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル フリー

     観光地における景観を考慮した無電柱化事業は,地域住民だけでなく外部からの観光客にとってもメリットとなる.そのため,無電柱化事業は観光まちづくりの観点からも大きく期待が持てる.そこで本研究では,愛媛県内子町において観光客を対象に二段階二項選択CVMによるアンケート調査を実施した.そして無電柱に対する観光客の評価を明らかにし,その上で観光地での無電柱化事業に関する考察を行っている.本研究の分析の結果,内子町以外からの観光客も無電柱化事業に対して約473円の支払意思があることが示された.つまり,観光地における無電柱化事業を進める上で,観光客の協力も重要であると考えられる.

建設材料と構造
論文
  • 西尾 浩志, 八木 洋介, 石川 靖晃
    2024 年80 巻2 号 論文ID: 23-00004
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル フリー

     本論文では,任意形状を有する大規模PC構造の緊張に対して,開発したプレストレス導入時に生じる摩擦などの影響を取り扱うことができる緊張解析法が合理的であることを,まず,3径間モデル橋に関して,従来解析法による断面力,たわみを提案解析法による値と比較して検討した.続いて,実際に施工された6径間連続ラーメン箱桁高架橋の設計に用いた解析値と提案解析法による解析値との比較を行い,従来解析法の精度向上を議論した.そして,最終的にこのような構造に対する合理的な緊張管理方法を提案した.これらを総合して,PC構造物の設計解析の一層の精度向上が可能となり,PC構造物の品質向上の趣旨を現実化できることが示された.

  • 重廣 和輝, 中島 伸一郎
    2024 年80 巻2 号 論文ID: 23-00070
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル フリー

     コンクリート舗装のポンピングによる路盤材の噴出・浸食プロセスを可視化することを目的として小型模型実験を開発した.外径350mmのリング型透明アクリル土槽に路盤模擬材を飽和状態で詰め,その上にコンクリート舗装版を模擬した目地(スリット)付きのアクリル板を載せて,周回式の輪荷重を載荷する実験である.珪砂6号を路盤模擬材とした実験の結果,輪荷重が目地を通過するたびに,路盤材が水とともに噴出する様子を再現しうることを確認した.載荷回数の増加につれて,路盤表面の浸食箇所がアプローチ版側からリーブ版側へと移動することや,荷重速度によって路盤材の噴出量には差異が生じることなど,ポンピングが路盤の浸食に与える影響を把握した.輪荷重の通過による舗装版のたわみ時間がポンピングの程度に影響を及ぼしていると推察される.

土木技術とマネジメント
論文
  • 中村 公一, 今西 将文, 西山 哲
    2024 年80 巻2 号 論文ID: 23-00046
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル フリー

     微地形表現図を航空レーザ(LP)測量データより作成する方法のひとつとして,ウェーブレット解析図がある.ウェーブレット解析図で用いるウェーブレット係数は,地形の凸部が正,凹部が負に対応する.しかし,ウェーブレット係数と地物の大きさの関係と,ウェーブレット解析条件であるスケールファクターがウェーブレット係数に与える影響は明らかにされていない.本検討では,比高差5m以下の凸地形を対象に,スケールファクターを考慮したウェーブレット係数と地物の大きさの関係について,模擬地形と航測LPより作成したグリッドデータを用いて検討を行った.これよりウェーブレット係数と地物の比高差1.0m~3.0mには正の相関がみられた.ただし,ウェーブレット係数と比高差の関係には上限値と下限値があることがわかった.

  • 水谷 大二郎, 貝戸 清之, 四方 滉也
    2024 年80 巻2 号 論文ID: 23-00092
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル フリー

     社会基盤施設の統計的劣化予測のための多段階ワイブル劣化ハザードモデルでは,連続時間軸上で時間依存型の健全度推移を表現するために,健全度の推移確率が解析解を持たない多重積分形式となる.そのため,モデルの推定および推定結果の利活用において,数値積分等の計算負荷が問題となっていた.それに対して,本研究では,離散ワイブル分布に基づき,健全度の推移確率が解析解を持つ離散時間多段階ワイブル劣化ハザードモデルを提案し,計算負荷低減を図る.同モデルは多段階ワイブル劣化ハザードモデルの時間に関する離散近似であると解釈できる.実在の高速道路伸縮継手装置の点検データを用いた実証分析を通して,離散時間多段階ワイブル劣化ハザードモデルの有用性に関して,モデル推定精度や推定時間の観点から検証を行う.

feedback
Top