2024 年 80 巻 3 号 論文ID: 22-00275
日本は人口減少社会を迎え,水道事業の持続的な運営が課題になっているが政策転換は容易ではない.本研究は,静岡県浜松市の水道コンセッション政策過程をKingdonの『政策の窓モデル』に基づき構造化し,同市で実施された下水道コンセッションと比較分析した.この結果,水道コンセッション政策過程の支配的要因として,(1)政治的影響を受けやすい水道政策の政治性,(2)政策過程に関与するアクター間の問題認識の差異,その他(3)政策実施主体固有の政治状況の3点を明らかにした.水道の政策転換に関する合意形成には,政策案が決定して政策が政治争点化する段階より前の問題設定(アジェンダ設定)段階において市民参加を図り,政策アクターと市民との間で水道の持続的運営に関する問題定義を共有するプロセスが有用との示唆を得た.