土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
80 巻, 3 号
通常号(3月公開)
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構造工学,地震工学,応用力学
論文
  • 森田 大成, 大塚 鎮, 酒井 久和, 小野 祐輔, 橋本 隆雄, 中澤 博志, 池本 敏和
    2024 年80 巻3 号 論文ID: 23-00128
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/20
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,3次元個別要素法(DEM)による,石垣構造物の地震応答解析の妥当性を検証することである.まず,既往研究で実施した小型石垣模型の傾斜破壊実験に対して2ケース追加実験を行い,解析パラメータを再検討した再現シミュレーションを行った.このシミュレーション結果から,築石を球体の集合としてモデル化することの妥当性を確認した.次に,妥当性が確認されたモデルを用いて実物大石垣の大型振動台実験の再現シミュレーションを実施し,築石の変動状態と変位量を精度よく再現できることを確認した.また,アンカーによる対策を施した解析では築石の孕み出しを最大約75%抑制し,地震時の石垣構造物に対して効果的であることを示した.

  • 渡邊 輝康, 野口 利雄, 平野 晃臣, 服部 翼, 槇 駿介, 本荘 淸司, 松井 繁之
    2024 年80 巻3 号 論文ID: 23-00172
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/20
    ジャーナル フリー

     疲労等で損傷した道路橋RC床版を,交通規制をしてPCaPC床版に取替える工事が進められている.しかし,PCaPC床版の接合の際,ループ継手等の従来工法は突出した鉄筋の重ね継手で接続するため接合部幅が30〜40cm程度と大きく,施工性改善,作業時間短縮が模索されている.このため本研究者らはPCaPC床版端部にC型金物を埋め込み,床版設置後に相対するC型金物をH型金物で嵌合した後,目地材を充填し接合が完了する「コッター床版工法」を開発した.この機械式継手により接合部幅を19mmまで縮め,作業性改善と作業時間短縮を実現した.本論文では本工法について輪荷重走行試験を行い,耐用年数100年を満足するだけで無く,それを大きく超えた荷重でも押し抜きせん断破壊を生じず,期待以上の疲労耐久性を有することを検証できた.

河川・海岸・海洋工学と水文学
論文
  • 徳永 貴久, 古賀 まりの, 川崎 北斗, 山砥 稔文, 秋永 将志, 丸吉 浩太, 高木 剛, 芹川 大成, 山口 浩, 上田 倫大, 速 ...
    2024 年80 巻3 号 論文ID: 22-00171
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/20
    ジャーナル フリー

     有明海における貧酸素水塊の空間分布を把握するために,2020年と2021年夏季に多機関が連携して一斉観測が行われた.2020年と2021年のいずれも有明海湾奥から諫早湾にかけて貧酸素水塊が形成されていた.また,2021年では出水前後で貧酸素水塊の分布を把握できており,大規模な出水により貧酸素水塊の分布面積が2倍程度になることが明らかになった.さらに,大規模な出水による密度成層の継続は1ヶ月程度と算出され,これは貧酸素化の時間スケールよりも長かった.大規模な出水によって長期間の密度成層が形成され,貧酸素化時間スケールが小さい湾奥西部海域中心に貧酸素水塊が先に形成され,湾奥南部海域へ拡大し,さらに諫早湾で形成された貧酸素水塊と一体化することで,大規模な貧酸素水塊が形成されたと考えられた.

  • 田中 豊, 川端 雄一郎, 加藤 絵万, 大矢 陽介
    2024 年80 巻3 号 論文ID: 22-00293
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/20
    ジャーナル フリー

     既設の防波堤や護岸では,供用期間の延長や外力の増大等に伴う改良設計の事例が増えつつあり,ケーソン部材の補強ニーズが高まっている.本研究では,ケーソン構造の補強工法の一つである中詰固化工法について,小型試験体による載荷実験および数値解析に基づき,中詰固化工法によるケーソン部材,特にケーソン前壁の補強効果を評価する方法を提案した.また,提案方法に沿って実規模のケーソン前壁を対象に補強効果の試算を実施した.

     本検討の範囲では,隔室内を全固化することで,前壁と固化体との一体性が確保されること,補強前と比較して耐荷力および剛性の向上が見込めることが確認された.また,補強効果の試算結果より,中詰固化工法により前壁に生じる曲げモーメントを低減できることが示唆された.

報告
  • 天野 卓三, 朝位 孝二, 菊田 勇平, 太田 康介, 山本 泰督
    2024 年80 巻3 号 論文ID: 23-00120
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/20
    ジャーナル フリー

     令和3年11月「特定都市河川浸水被害対策法等の一部を改正する法律」が施行され,広島県では同法に基づき,令和4年7月に竹原市を流れる二級河川本川水系本川を特定都市河川に指定した.本稿では,氾濫域のほとんどが用途地域に指定されている本川流域を事例に,河川整備や流域対策など,特定都市河川流域への適用と課題について報告する.

     主要な結論は次のとおりである.1) 本川の治水計画は内水域(用途地域)での流出抑制を組み込んでおり,段階的な整備においても河川・下水道の将来ビジョンに基づいた計画とする必要がある.2) 用途地域に指定されている流域では,貯留機能保全区域の指定,調整地等の建設など,土地利用方法に関して幅広い視点での検討を進め,地域住民・企業との合意形成を図りつつ,対応方法を検討する必要がある.

地圏工学
論文
  • 木村 絢, 前田 健一, 牛渡 裕二, 中村 拓郎, 内藤 直人, 近藤 慶亮
    2024 年80 巻3 号 論文ID: 23-00253
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/20
    ジャーナル フリー

     落石防護土堤は設置スペースさえあれば,道路沿いの落石災害を軽減するための落石対策工として経済性や施工性,維持管理性に優れている.本論文では,落石防護土堤の性能設計法の確立に向けて衝撃載荷実験と静載荷実験を実施し,落石防護土堤の変形・破壊挙動について検討した.その結果,落石防護土堤の変形・破壊挙動は衝撃荷重条件下と静荷重条件下で異なることが判明した.特に,衝撃荷重条件下では,静荷重条件下と同じ仕事量において落石防護土堤の損傷がより小さいことが明らかになった.

  • 山本 修一, 森岩 寛稀, 佐藤 伸, 西村 友良
    2024 年80 巻3 号 論文ID: 23-00272
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/20
    ジャーナル フリー

     放射性廃棄物処分場の設計,性能評価で必要なベントナイト系緩衝材の相対透水係数を取得する試験法として,一定サクション下での定常透水試験を可能とする試験装置を開発・試作し,ベントナイト・砂混合土の不飽和透水試験を試行した.力学連成気液二相流モデルによる試験のシミュレーション解析に基づき相対透水係数取得試験法としての適用性を確認した.加えて,同様のシミュレーション解析により非定常不飽和透水試験法の1つであるGardner法の有用性と留意点について議論した.提案試験法では供試体内は付与サクションに相応する一様な飽和度分布と鉛直一次元流が形成され,不飽和透水係数を適切に計測評価できることがわかった.一方,Gardner法の有用性も明らかになったが材料特性に応じたサクション増分の設定の重要性を指摘した.

土木計画学
論文
  • 岩本 一将, 大石 智弘
    2024 年80 巻3 号 論文ID: 22-00011
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/20
    ジャーナル フリー

     本稿は,米国のノーマル町で実施された道路空間再編による空間整備事業を対象に,文献調査とインタビュー調査によって事業実施のプロセスや空間デザインに着目した上で,事業の実施体制およびその事業評価を明らかにした.本事業はラウンドアバウトの中央島部分が広場空間として設計されている点が特徴であり,竣工まで比較的長期間を要しているが,Uptown Development Directorが本事業を含む再開発計画全体の進捗管理やデザイン監理を行うことで,高い事業評価を受ける公共空間を創出することができた.具体的には,交通安全の確保や環境改善効果などの地域課題に寄与するとともに,地域住民の意見に応えたデザインを施すことで竣工後のアクティビティを誘発し,地域の資産価値向上や貯水機能上昇などの効果が顕れていた.

  • 土井 健司, 手嶋 一了, 青木 保親, 葉 健人
    2024 年80 巻3 号 論文ID: 22-00120
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/20
    ジャーナル フリー

     本稿では,地域公共交通の存続が最も危ぶまれる地域の一つである四国地方において実現した異種交通モード間の共同経営に注目し,その歴史的意義とMaaS新時代における交通政策への示唆を論じている.異種交通モード間の共同経営を明記した陸上交通事業調整法の経緯を概観し,香川・徳島で実現した新旧2つの事例との関連性を捉えた.両者は,行政と交通事業者が連携したコーディネーションに基づき,地域の輸送資源を総動員し,交通事業者の経営基盤を強化しつつ,利便性の高いサービス提供を図る点で共通する.この知見に基づき,MaaS新時代において必要となる多様な主体の関係性の基盤を示し,ニューローカルを基本とし,社会的インパクトを志向する交通サービスの統合と一元化の方向を提示した.

  • 金山 洋一, 中川 大, 本田 豊, 猪井 博登, 高柳 百合子
    2024 年80 巻3 号 論文ID: 22-00223
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/20
    ジャーナル フリー

     我が国の地方都市では,都市を持続可能とするコンパクトシティ政策が極めて重要となっている.同政策は,都市軸となる鉄道等公共交通の利便性と持続可能性が重要な要件となる.

     地域鉄道は,まとまった需要が存在しない立地環境にあって厳しい経営を続けてきたが,人口減少の進行等によって限界が現れ,地域公共交通活性化再生法による公有民営化をはじめ公的支援策による存続が複数なされるようになった.しかし,利便性や持続可能性については課題が見られる状況にある.

     本稿では,使いやすいサービスレベルの持続可能な提供,及び近年激甚化,頻発化してきた自然災害,新型感染症等の出現に対する強靭性の観点から,地域鉄道における既往の上下分離施策等を評価するとともに,対応性を有しうる官民で役割を分担する上下分離の考え方と姿を論じる.

  • 笹森 早苗, 小松崎 俊作
    2024 年80 巻3 号 論文ID: 22-00275
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/20
    ジャーナル フリー

     日本は人口減少社会を迎え,水道事業の持続的な運営が課題になっているが政策転換は容易ではない.本研究は,静岡県浜松市の水道コンセッション政策過程をKingdonの『政策の窓モデル』に基づき構造化し,同市で実施された下水道コンセッションと比較分析した.この結果,水道コンセッション政策過程の支配的要因として,(1)政治的影響を受けやすい水道政策の政治性,(2)政策過程に関与するアクター間の問題認識の差異,その他(3)政策実施主体固有の政治状況の3点を明らかにした.水道の政策転換に関する合意形成には,政策案が決定して政策が政治争点化する段階より前の問題設定(アジェンダ設定)段階において市民参加を図り,政策アクターと市民との間で水道の持続的運営に関する問題定義を共有するプロセスが有用との示唆を得た.

  • 菅原 諭良斗, 佐々木 邦明, 小菅 英恵
    2024 年80 巻3 号 論文ID: 22-00361
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/20
    ジャーナル フリー

     わが国では全年齢に占める高齢運転者による事故件数の割合が増加し,社会問題となっている.運転免許自主返納制度等の対策は,リスクや事故の責任を個別要因に帰する対策とも言える.本研究では,高齢運転者の運転頻度や運転技能等は,地域ごとの土地利用状況や道路の利用状況・混雑状況など,普段の運転環境の違いに長期的に影響を受け,発生する事故の状況は個別要因だけでなくそれらの影響を受けるという想定のもと,茨城県を対象として高齢運転者による事故と地域特性との関係性に関する分析を行った.その結果,高齢運転者の事故の多くに共通する事故の特徴が抽出された.また,人身事故と土地利用や道路幅員などとの間にも有意な相関が確認され,地域の特性に応じた高齢運転者の事故対策の重要性を示唆する結果を得た.

  • 田中 駿也, 川端 祐一郎, 藤井 聡
    2024 年80 巻3 号 論文ID: 23-00001
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/20
    ジャーナル フリー

     都市地域の持続的な発展にとって,地域経済を牽引し雇用を提供する企業の立地は重要である.国内の法人税率の高さが企業の海外移転を加速するとの主張が存在するが,その妥当性に疑義を呈する学術研究も存在する.しかしこれらの研究では,事業拠点の海外への「拡大」と「移転」が区別されていない.本研究では,企業拠点の海外への「移転」に法人税率が影響を及ぼす可能性について,民間ビジネスマンへのインタビュー及びアンケート調査によって検証した.その結果,法人税率が企業拠点の海外移転の主たる理由となることは現実には極めて稀であり,また「海外需要の獲得」や「現地ニーズへの対応」等の要因に比べて重要でないことが明らかとなり,都市地域の企業立地空洞化対策としてはむしろ国内需要喚起等が有効である可能性が示唆された.

  • 井上 敏孝
    2024 年80 巻3 号 論文ID: 23-00100
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/20
    ジャーナル フリー

     戦前,朝鮮の鎮南浦では,地理的条件によって特殊な設備を持った石炭積込施設が建設されることとなった.同時期の日本において同様,あるいは類似した地理的条件を持った場所がなかったことから,鎮南浦港における石炭積込施設の建設を巡っては,従来の技法にはない,新たな施工方法・施設建設がなされることとなった.そのため同港への施設建設は,その計画立案及び試験的設備の建設等一連の作業が,戦前の日本初であり唯一のものとなった.本稿では以の点について欧米諸国や日本各地の事例を明らかにしたうえで,比較検討することで,鎮南浦港で建設された施設の特徴について解明することを目指す.

  • 中川 権人, 谷口 綾子, 片桐 暁
    2024 年80 巻3 号 論文ID: 23-00204
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,インタビュー調査を基に,東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の輸送担当者の取り組みを題材とした物語を作成した.そして,土木・交通を学んでいる大学生,及び東京都職員にその物語の通読を要請し,物語が読者の東京都へのシビックプライド,愛国心,ナショナリズムに与える影響を検証した.その結果,本研究で構築した物語が,東京2020大会の誇り度を醸成させること,東京都へのシビックプライドとナショナリズム醸成に一定の効果があること,学生に対しては「東京2020大会輸送チームの取り組み」に対する誇り度を醸成させることが示された.また,東京2020大会とその輸送チームの取り組みは,東京都へのシビックプライドのうち「忠誠的愛郷心」因子の源泉であること,東京2020大会は「愛国心」因子の源泉であること,が示された.

建設材料と構造
論文
  • 松本 修治, 渡邉 賢三, 柳井 修司, 坂井 吾郎, 橋本 紳一郎
    2024 年80 巻3 号 論文ID: 22-00269
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/20
    ジャーナル フリー

     コンクリート工事における生産性向上の手段として高流動コンクリートの適用が考えられるが,石灰石微粉末や増粘剤といった使用材料の種類が増えることからコストや製造の繁雑さが課題となり,一般的なRC構造物にはほとんど適用されていないのが実状である.これらの課題に対し,筆者らは,安価でかつ汎用性の高い締固め不要コンクリートの開発を進めている.本稿では,この締固め不要コンクリートに関し,モルタル中に含まれる0.6mm以下の粒子の容積割合と単位粗骨材絶対容積が,充塡性をはじめとするフレッシュコンクリートの性状に与える影響について明らかにした.

  • 伊藤 洋介, 川瀬 翔大
    2024 年80 巻3 号 論文ID: 23-00123
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/20
    ジャーナル フリー

     コンクリート分野では新しい問題が発生するたびに,その解決策が模索されてきた.その対応プロセスは学協会等の歴史年表に残されているが,企業等組織の取り組みまでは網羅されていない.このため,特許惜報を用いて企業等組織の取り組みを含めた技術変遷の検討を行う.

     本研究では,コンクリート分野の問題として塩害を例に挙げ,塩害を解決するために用いられる補修工法の一つである電気化学的防食工法を対象に調査を行う.そして,技術変遷を調べる方法の一つとして,特許の引用・被引用関係を用いた手法を提案するとともに,電気化学的防食工法の技術に関する具体的な変遷の一つを明らかにし,新たな技術開発の着想を得るための基礎データとする.

  • 岡 滋晃, 篠口 冴子, 中島 陽, 浦田 智仁, 吉本 正浩, 阿南 健一, 斉藤 仁, 野末 秀和, 佐々木 敏彦
    2024 年80 巻3 号 論文ID: 23-00124
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/20
    ジャーナル フリー

     土木構造物の1つである地中送電用のトンネルは,多くが建設後30年以上経年した設備であり,大半が鉄筋コンクリートを主体とする構造である.経年した土木構造物の維持管理にかかるコストを合理化する方法の一つは,鉄筋に発生している応力を正確に測定することで残存耐力を評価し,適切な補修や補強の計画を行うことである.そこで,鉄筋を切断せずに応力度を測定できるX線応力測定法について,鉄筋に適用する方法を開発した.その結果,載荷状態にある塑性化していない鉄筋における測定方法を明らかにするとともに,測定スキームを提案した.

  • 平本 真也, 藤澤 拓馬, 植村 幸一郎, 檀 康弘
    2024 年80 巻3 号 論文ID: 23-00202
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/20
    ジャーナル フリー

     高炉スラグ微粉末を用いた硬化体の水分浸透速度係数を決定する要因を把握するために,乾燥条件及び試験体寸法を変化させた場合の水分浸透試験を実施した.促進炭酸化の影響を受けた場合,水分浸透速度係数は硬化体の物性値である圧縮強度,空隙量,表面透気係数では一義的に評価できないことが確認された.また,水の浸透は外環境の影響を受けた表層部により浸透することから,表層部及び内部の性状に着目した結果,硬化体内部の含水率によって水分浸透速度係数が定まることが明らかとなった.高炉スラグ微粉末を用いた硬化体は含水率が比較的高く,複雑な空隙構造を形成するC-S-Hの存在により,水の浸透抵抗性が高まると推察された.

土木技術とマネジメント
論文
  • 野村 栄治, 五艘 隆志
    2024 年80 巻3 号 論文ID: 22-00229
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/20
    ジャーナル フリー

     公共工事における建設コストは,透明性の高い評価と判断の過程が必要不可欠である.本研究では,我が国の公共工事の建設コスト管理システムに焦点を当て,発注者と受注者のコスト管理の実態を現行の法律と歴史的な背景から分析を試みた.その結果,発注者は予定価格に用いる積算に重点を置き,受注者から実態に基づいて提出されるコストを重視せずに精算が行われることもあり,常識的に建設産業のコスト管理実態は“見えないもの”となっており,海外の状況とは異なっていた.インフラ輸出政策が推進される中,契約管理のみならずコスト管理システムを転換し,建設コスト管理の専門技術を持つ第三者による入札価格の評価や施工段階における出来高査定により,建設産業がさらに透明性を持ち,海外に発展していく上でも重要な要素であることが確認された.

  • 小西 信義, 中前 茂之, 羽鳥 剛史, 原 文宏, 倉内 公嘉
    2024 年80 巻3 号 論文ID: 22-00346
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/20
    ジャーナル フリー

     現在,担い手の減少と高齢化の進展等と相まって,除雪オペレーター等も円滑な世代交代について技術習得・伝承の在り方が課題となっている.本研究は,除雪オペレーター等の技術習得・伝承が個々の経験に基づきどのように構成されているかを把握するため,札幌市内のある除雪業者に所属する除雪オペレーター及び助手を対象に質問紙調査を行った.その結果,i) 除雪技術の習得・伝承は作業現場で実践されることが中心的で,ii) 経験年数1年目に技術習得,3年目に技術伝承の頻度がそれぞれ頂点を示し,以降は頻度が下降していくことがわかった.また,iii) 除雪技術の習得は熟度者からの伝承よりも学び手の積極性が先行するものだと考えられることから,除雪技術の習得と伝承がOJTでかつ個人の裁量の中で展開されているといった実態が把握できた.

環境と資源
論文
  • 花形 惇史, 酒井 宏治, 小泉 明, 酒井 健治, 髙橋 大樹, 小林 貢
    2024 年80 巻3 号 論文ID: 22-00165
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/20
    ジャーナル フリー

     閉鎖性水域である貯水池は,流入河川及びその流域の影響を強く受けるため,流域からの水源管理は重要である.本研究では,森林が卓越する流域の最下流付近において採水した水のシリカ,アルカリ度を計測し,対象流域中の森林の下層土壌,基岩などの地理的情報との関係性について検討した.さらに,計測したシリカ及びアルカリ度の長期的な変遷を分析することで,森林の持つ水源涵養機能の長期的な変遷をマクロ的に把握することを試みた.その結果,シリカ及びアルカリ度は傾斜角度と高い相関性を示し,シリカが地下水の滞留時間を,アルカリ度が地下水位のレベルを反映しうる指標であること,流量の変化を考慮した上で経年的に土壌中滞留時間が増大している可能性があることを見出した.

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