抄録
2011年,修復工事中に崩落したインドネシア最長吊橋であるクタイ・カルタネガラ(Kutai-Kartanegara)橋の事故原因調査結果において,中央径間中央部のクランプのピンのせん断破壊が全体崩落の引き金となったことが報告された.しかし,せん断破壊原因の詳細については,当該部の破面解析が行われていないことなどから,未解明な点が残されていた.本ノートでは,クランプに用いられた高強度ダクタイル鋳鉄の靱性に関わる唯一の情報とも言える事故調査報告書のシャルピー衝撃試験結果に基づき,線形破壊力学を用いてせん断力によるピンの脆性破壊の可能性について検討し,クランプにハンガーロッド軸力の水平方向成分などにより生じる引張力が付加されると比較的低応力で脆性破壊が発生する可能性があったことを示した.