土木学会論文集A1(構造・地震工学)
Online ISSN : 2185-4653
ISSN-L : 2185-4653
69 巻, 2 号
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
和文論文
  • 八ツ元 仁, 堺 淳一, 星隈 順一
    2013 年 69 巻 2 号 p. 139-152
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/20
    ジャーナル フリー
     中空断面RC橋脚においては,その構造特性から内面の点検が困難であり,たとえ地震後に内面の損傷を発見できたとしても修復が非常に難しいという特性を持っている.中空断面RC橋脚における耐震性能の評価においては,これらの特性をすべて踏まえたうえで限界状態を設定することが必要である.しかし,中空断面RC橋脚に関する研究は少なく,現段階で得られている中空断面橋脚の耐震性能に関する知見は十分でない.本研究では,内面の損傷状態と外周面の損傷状態の相関など破壊状態に至るまでの損傷の進展過程に関する知見が少ない高軸力かつ高軸方向鉄筋比の中空断面RC橋脚について,正負交番繰返し載荷実験を行い,その損傷過程と破壊形態の把握を行うとともに,軸力の大きさがこれらの損傷特性に及ぼす影響についても検証を行った.
  • 橋本 国太郎, 築地 貴裕, 杉浦 邦征
    2013 年 69 巻 2 号 p. 159-173
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,接合面内や継手全体が腐食した高力ボルト摩擦接合継手の腐食程度と残存耐力との関係を明らかにするために,腐食促進試験によって継手を一定期間ごとに腐食させた後,載荷実験を行った.腐食促進試験では,ボルトや接合面内の腐食状態,表面粗さの変化およびボルト軸力の変化などを計測して腐食状態を把握した.載荷実験では,すべり係数,すべり耐力,降伏耐力のほかに最大耐力も測定した.
     これらの実験の結果,接合面内が腐食し,錆が発生することで,ボルト軸力は減少するものの,すべり耐力およびすべり係数は上昇することがわかった.また,降伏耐力や最大耐力に関しては,本実験の範囲内では,若干の低下がみられたもののほとんど変化しないことがわかった.
  • 吉田 郁政, 本城 勇介, 大竹 雄
    2013 年 69 巻 2 号 p. 174-185
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/20
    ジャーナル フリー
     劣化あるいは健全度のデータベースには構造物や劣化の特性が異なるデータが混在しており,その分離を行った上で劣化に関する回帰曲線を求めることが好ましいが,分離に必要な情報を完備することは一般に困難と予想される.そこで,本研究では,EMアルゴリズムと情報量基準を用いることにより,1)統計的にデータを複数のグループに分類,2)劣化曲線の算定,を同時に行う方法について提案した.複数の直線から架空データを作成して提案手法によって元の直線群(モデル)を推定できることを確認した後,橋梁に関する実際の点検データベースに適用して統計的に複数の劣化曲線の算定を行った.その結果,4種類の劣化速度が異なる劣化曲線が求められ,それぞれの曲線にはある程度の物理的な解釈を加えることができることを示した.
  • 秦 吉弥, 中村 晋, 野津 厚
    2013 年 69 巻 2 号 p. 186-205
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/20
    ジャーナル フリー
     2008年岩手・宮城内陸地震の震源域では,斜面崩壊などの大規模な地盤被害が多発した.その被災機構の分析等のため,被災地点等での地震動を推定することは非常に重要である.そのために利用可能な手法は複数存在しているが,推定手法の違いによる地震動の推定精度の違いについては,これまでほとんど検討が行われていない.そこで本研究では,強震記録が得られている地点での地震動を複数の方法を用いて推定することで,推定手法の精度について定量的な評価を行った.その結果,常時微動計測や中小地震観測を実施することで地震動の推定精度が大幅に向上すること,大地震後に被災地点等において常時微動計測や中小地震観測を実施する意義は大きいことを示した.
  • 美島 雄士, 小野 潔, 田川 陽一, 西村 宣男
    2013 年 69 巻 2 号 p. 206-221
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/20
    ジャーナル フリー
     鋼製ラーメン橋脚のはりと柱が交差する隅角部には,従来からせん断遅れ現象により生じる局所的なピーク応力による弾性設計が適用されている.そのため,隅角部は一般部に比べて重量が増加することから施工性や経済性の面で不都合が生じることがある.本研究は,疲労耐久性の向上から新設の隅角部に設置されているフィレット構造に着目し,フィレットの機能を活用した隅角部の合理的な設計法の確立を目的として,縮尺模型による載荷実験および実機モデルによる弾塑性有限変位解析を行った.その結果,実構造物に適用されているフィレットの性能,すなわち,耐荷力とフランジの応力集中低減効果を明らかにし,さらに,その結果に基づいたフィレット構造に対する限界状態と性能照査法を提案した.
  • 坂井 晃
    2013 年 69 巻 2 号 p. 232-244
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/20
    ジャーナル フリー
     気象庁の計測震度は,3成分合成加速度にハイカットとローカットだけでなく,周期に関するフィルター処理も施され,加速度と速度の中間的な評価方法となっている.また,ローカットフィルターによって,長周期領域の震度を低く評価する算定法となっているために,長周期領域を有する構造物の被害に対応していないことが指摘されている.本研究は,ローカットフィルターを見直し,現計測震度との対応関係を明確にした上で,長周期領域の影響も考慮した周波数補正加速度の算定方法を提案し,速度・変位にも対応した震度の表現法について検討した.また,速度と変位に対応した震度の時系列表示としては,筆者によって提案している移動実効値法を用いた震度レベルの時系列表示を使用して,比較検討した.
  • 宮下 剛, 秀熊 佑哉, 小林 朗, 奥山 雄介, 工藤 晃也, 長井 正嗣
    2013 年 69 巻 2 号 p. 257-274
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,炭素繊維シートに継目を設けて鋼部材に接着した工法の補強効果や継目の強度特性に関する基礎データを得ることを目的としたものである.まず,継目長さと継目数を試験パラメータとし,CFRPストランドシートに継目を設けて接着した鋼板の一軸引張試験を実施した.その結果,継目長さを20mm以上にすると,高降伏点鋼であるSBHS700の降伏応力に達するまで,シートの破断やはく離が発生しなかった.鋼材の降伏応力以下で終局に至った試験体の破壊形態は,継目端部の接着剤の凝集破壊に起因したき裂が継手中を進展する破壊モードとなった.さらに,破壊形態や強度に対して考察を加えるために,有限要素解析と準解析的なアプローチによる手法を用いて解析的な検討を行った.
  • 田辺 篤史, 佐々木 栄一, 三木 千壽
    2013 年 69 巻 2 号 p. 275-282
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/20
    ジャーナル フリー
     暴露試験結果の分析により,腐食パラメータBsは局所腐食環境指数のZ値と強い相関があると判明した.しかし,Z値はその算出に多数の計測が要求されるためコストが問題となっている.そこで,Z値に代わるものとして,環境の腐食性をACM型腐食環境センサで計測し,その結果を耐候性鋼材腐食量推定へ適用する方法について検討を行った.センサ特性を把握し,評価方法の検討・検証を行った上で,暴露試験結果データを用いて腐食量推定式の構築を試みた.その結果,ACM型腐食環境センサへの気温の影響は小さく,気温が及ぼす効果は別途考慮する必要があること,年間ACM電気量の対数とBsの相関が高いことが判明した.得られた知見をもとに,ACM型腐食環境センサを利用した腐食環境計測データから耐候性鋼材の腐食速度を推定する手法を提案した.
  • 今井 篤実, 大屋 誠, 武邊 勝道, 麻生 稔彦
    2013 年 69 巻 2 号 p. 283-294
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/20
    ジャーナル フリー
     さび安定化補助処理を施した耐候性鋼橋梁の表面状態では,被膜の風化,消失が不均一であるため,その表面の被膜劣化やさびの保護性を目視外観評価基準だけで判定するには,専門とする熟練者の判定が必要な実情にある.既往の評価法は外観評価を主体としたものなので,評価者の熟練度によりバラツキも生じている.本報では,既に裸使用材の耐候性鋼橋梁への定量的調査に適用しているイオン透過抵抗法を併用したさび安定化補助処理材の表面状態評価法を検討した.
  • 水野 剛規, 後藤 芳顯
    2013 年 69 巻 2 号 p. 295-314
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/20
    ジャーナル フリー
     兵庫県南部地震以後,アンカー部は修復困難な損傷発生を避けるため,鋼製橋脚躯体より大きな耐力を持つようにキャパシティーデザインの考え方で設計される.一方,兵庫県南部地震以前に建設された鋼製橋脚の耐震補強においても同様な考え方が用いられるが,アンカー部には比較的大きな損傷が許容されている.しかしながら,いずれの鋼製橋脚においても,応答値を計算するモデルでは橋脚躯体基部はフーチングに剛結と仮定される.ここでは,上記2種類の鋼製橋脚アンカー部に対して橋脚躯体基部を剛結とするモデル化の妥当性ならびに基部の固定度が橋脚の終局挙動に及ぼす影響を水平1方向繰り返しと,より現実的な水平2方向繰り返し荷重下において検討する.
  • 斉藤 雅充, 古屋 元規, 三木 千壽, 市川 篤司, 佐々木 栄一
    2013 年 69 巻 2 号 p. 335-344
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/19
    ジャーナル フリー
     腐食等により耐力の低下した既設鋼鉄道橋を性能向上させる方法として,既存のまくらぎに替えてコンクリート床版を設置して構造形式を合成構造とする手法を提案した.この手法は夜間列車間合いでの施工が前提となるため,施工時間を短縮するためにプレキャストコンクリート床版を用いる必要があり,既設鋼桁と床版の接合方法が課題となる.本研究では,既設鋼桁に提案手法を施した桁試験体を用いて載荷試験を行い,桁の構造性能の評価を行なった.この結果,鋼桁・床版接合部の破壊が先行して発生するが,桁として十分な耐力を有することが明らかとなった.また,接合部の破壊特性および強度について検討し,列車荷重や鋼桁の降伏荷重に対して接合部が十分な強度を有することを明らかにした.
  • 玉越 隆史, 石尾 真理, 小沼 恵太郎
    2013 年 69 巻 2 号 p. 345-360
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    ジャーナル フリー
     道路橋の鋼床版下面のU型補剛材(トラフリブ)とデッキプレートの接合部において,トラフリブ内側の溶接ルート部から発生してデッキプレート内を路面方向に進展する疲労亀裂を対象として,デッキプレートの板厚とトラフリブの板厚の組合せの相違が疲労耐久性に及ぼす影響について明らかにする目的で実験と解析による検討を行った.本研究では横リブ交差部に着目して実物大供試体を用いた定点載荷疲労試験を実施し,超音波探傷試験とひずみ計測から亀裂の発生及び進展の状況を推定した.また,変動荷重下で横リブ交差部のトラフリブとデッキプレートの縦方向溶接継手部近傍で観測される複雑な応力変動と亀裂の進展速度の関係を,亀裂の起点と考えられる溶接線を共有する各部材の溶接線直近のひずみ振幅との関係に着目して分析を行った.
  • 大西 達也, 佐々木 栄一, 田村 洋, 山田 均, 勝地 弘
    2013 年 69 巻 2 号 p. 361-371
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    ジャーナル フリー
     兵庫県南部地震では鋼製橋脚隅角部に予期せぬ脆性破壊が発生した.地震時の動的な繰返し塑性変形下では,変形に伴う温度上昇が脆性破壊発生挙動に影響を及ぼす可能性がある.本研究では,標準的な形状・寸法を有する鋼製橋脚隅角部を対象とし,地震応答解析と熱弾塑性解析を組み合わせ地震時の局部的な温度上昇レベルを解析的に検討し,局部的には30℃を超えるような大きな温度上昇が隅角部に発生し得ることを確認した.また,動的負荷の影響として温度上昇とひずみ速度が鋼材の破壊靭性に与える影響を評価したところ,その影響はどの段階で破壊が起こるかによって異なるが,温度上昇の影響がひずみ速度の影響を上回り脆性破壊を抑制する効果を及ぼす因子となり得ることが示された.
  • 藤野 陽三, シリゴリンゴ ディオンシウス, 並川 賢治, 矢部 正明
    2013 年 69 巻 2 号 p. 372-391
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    ジャーナル フリー
     高密度地震応答計測システムを有する横浜ベイブリッジでは,2011年3月11日東北地方太平洋沖地震Mw9.0の本震と余震による周辺地盤の地震動と地震応答の記録が収録された.本論文はその記録を多面的に解析し1) 主桁の振動は橋軸直角方向の応答が卓越した(最大応答変位62cm),2) 橋軸方向の主桁と主塔および端部橋脚の応答記録から,主塔と端部橋脚位置のリンク支承が所要の免震性能を発揮した,3) 主塔と端部橋脚のウィンド沓は橋軸直角方向に衝突していた形跡がある,4) 本震時の大振幅応答時には,主桁の橋軸直角方向水平たわみ1次モードや主桁の鉛直方向たわみ1次モードの固有振動数が変化しただけでなく,それぞれのモード形において,小振幅時には見られない連成挙動が同定されたことを明らかにしている.
  • 徳永 宗正, 曽我部 正道, 後藤 恵一, 山東 徹生, 玉井 真一, 小野 潔
    2013 年 69 巻 2 号 p. 392-409
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    ジャーナル フリー
     近年高速鉄道で採用の多い背の高い防音壁は,固有振動数が低く,従来支配的な設計要因とはならなかった列車風圧との共振による動的増幅が懸念された.本論文では,動的応答増幅を考慮した防音壁の設計法の提案を目的に,測定・数値解析に基づく検討を行った.列車通過時の防音壁の応答において,200km/h以下では列車荷重による応答が支配的となる一方,列車速度200km/h以上では列車風圧による応答が90%以上を占め,設計においては列車風圧のみを考慮すればよいこと,列車風圧による防音壁の応答は,列車風圧パルスと固有振動モードによる共振効果,後尾部パルスの重畳効果により増幅されること等を解明した.さらに,列車通過時の防音壁の動的応答を一般化し,防音壁の設計法として,シミュレーションによる手法と簡易法を提案した.
和文報告
  • 南 邦明, 山口 隆司
    2013 年 69 巻 2 号 p. 222-231
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/20
    ジャーナル フリー
     本報告は,橋梁で一般に使用されるSM490Y (SM520も含む), SMA490W, SM570QおよびSMA570Wの溶接施工で用いられるガスシールドアーク溶接の溶接材料の機械的性質を把握することを目的として,溶接材料の現状調査を行ったものである.調査は,ソリッドワイヤおよびフラックス入りワイヤを対象とし,638枚の溶接材料ミルシートから,引張強度,降伏強度,シャルピー衝撃値および伸びを調査した.また,鋼材の機械的性質およびJIS溶接材料規格値との比較も行った.その結果,引張強度,降伏強度および伸びは,鋼材と同等であり,JIS溶接材料規格値に対しても十分な強度を有していた.しかし,シャルピー衝撃値は,この規格値を満足するものの,規格値の下限値付近のデータも多くみられ,鋼材と溶接材料の衝撃値には大きな隔たりがあることを示した.
  • 森 猛, 平山 繁幸
    2013 年 69 巻 2 号 p. 245-256
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/20
    ジャーナル フリー
     横桁フランジが接合された主桁ウェブ直上を車両が通過すると,せん断応力の向きが反転するために主応力の方向は瞬時に変化する.疲労き裂は主応力に直角な方向に進展することが知られているが,主応力方向が変化する場での疲労き裂の進展性状と疲労強度は未だ明らかとはなっていない.ここでは,主応力方向が変化する応力場にある面外ガセット溶接継手の疲労き裂の進展挙動と疲労強度を明らかにすることを目的とし,桁試験体の疲労試験と疲労き裂進展解析を行っている.
  • 杉崎 光一, 阿部 雅人, 輿水 聡
    2013 年 69 巻 2 号 p. 315-328
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/20
    ジャーナル フリー
     土木構造物の維持管理において,ヘルスモニタリングへの期待が高まっている.モニタリングシステムの実用化のためには,手法の開発だけでなく,実装可能なシステムを構築する必要がある.しかし,モニタリングシステムはシーズベースで開発されることが多く,センサメーカーにとってどのようなセンサをユーザーが期待しているかを把握するのは困難な状況にある.本研究では,システムを実装する上で,評価が必要な項目を,鉄道橋の橋脚で計測した実際のモニタリングデータを利用して整理し,その特徴を明らかにした.また,評価項目に関して,想定する外力や算出する指標ごとに精度や耐久性について具体的な性能例を示した.性能を明示することで,ユーザーとメーカーが一体となった高付加価値で信頼性の高いシステム開発が期待される.
和文ノート
  • 秦 吉弥, 釜井 俊孝, 野津 厚, 王 功輝
    2013 年 69 巻 2 号 p. 153-158
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/20
    ジャーナル フリー
     2011年東北地方太平洋沖地震では,仙台市緑ヶ丘団地の宅地造成盛土が崩壊するなど,深刻な被害が発生した.緑ヶ丘団地における本震時の地震動を推定することは,被災機構の分析等を行う上で非常に重要である.そこで本研究では,緑ヶ丘団地において余震観測を実施し,当該地点におけるサイト特性を評価した.そして,本震時における地盤の多重非線形効果ならびに複数のサブイベントの地震波形への寄与を考慮できる拡張型サイト特性置換手法を用いて,緑ヶ丘団地周辺の観測点での本震記録を再現し,手法の適用性を確認した上で,緑ヶ丘団地における地震動の推定を行った.
  • 米田 昌弘
    2013 年 69 巻 2 号 p. 329-334
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/20
    ジャーナル フリー
     駅前の歩道橋と遊園地内に架設された人道吊橋を対象として振動計測を行い,鉛直振動と水平振動に対する歩行者と静止者の振動感覚について検討した.駅前の歩道橋に対する実験から,鉛直振動については,静止時の方が足踏み時よりも明らかに振動感覚が敏感になっていること,また,遊園地内に架設された人道吊橋に対する実験から,水平振動に対しても,鉛直振動と同様に,静止時の方が足踏み時や歩行時よりも明らかに振動感覚が敏感になっていることがわかった.この結果を踏まえ,水平振動に対しては,静止時と歩行時(足踏み時)のそれぞれについて振動感覚と加速度の関係式を提示した.
  • 川井 豊, ディオンシウス M. シリンゴリンゴ , 藤野 陽三
    2013 年 69 巻 2 号 p. 410-415
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    ジャーナル フリー
     2011年,修復工事中に崩落したインドネシア最長吊橋であるクタイ・カルタネガラ(Kutai-Kartanegara)橋の事故原因調査結果において,中央径間中央部のクランプのピンのせん断破壊が全体崩落の引き金となったことが報告された.しかし,せん断破壊原因の詳細については,当該部の破面解析が行われていないことなどから,未解明な点が残されていた.本ノートでは,クランプに用いられた高強度ダクタイル鋳鉄の靱性に関わる唯一の情報とも言える事故調査報告書のシャルピー衝撃試験結果に基づき,線形破壊力学を用いてせん断力によるピンの脆性破壊の可能性について検討し,クランプにハンガーロッド軸力の水平方向成分などにより生じる引張力が付加されると比較的低応力で脆性破壊が発生する可能性があったことを示した.
feedback
Top