日本計算工学会論文集
Online ISSN : 1347-8826
ISSN-L : 1344-9443
大規模モデルに適用可能な流体-構造連成を考慮した船体振動解析手法の開発 ――第 2 報:大規模モデルへの適用――
宮下 哲治岡澤 重信中村 哲也平川 真一高橋 弘行
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2018 年 2018 巻 p. 20180017

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抄録

タンカー,バルクキャリア,コンテナ船といった一般商船の乗組員は,航海中は船内で長時間を過ごす.乗組員の居住性,快適性に与える要因は多数あるが,そのひとつとして振動が挙げられる.船舶は,オーダーメイドの大型構造物であり試作品での実験は実質不可能である.そのため,設計段階において振動予測を行い,適切な防振対策を実施することは極めて重要である.設計段階における防振対策の検討では,精度良く振動特性を推定することが重要なことから,数値解析手法として有限要素法(FEM)を用いることが一般的になっている.主船体の2節振動に関しては,従来手法でも3%~5%の誤差である.2節振動以上の固有振動数に関しては5%よりも大きい誤差となる場合もある.上部構造や煙突が単独で振動する振動モードでは約5%の誤差であり,ほぼ十分な解析精度を有している.しかし,主船体高次振動と上部構造の連成振動といった複雑な現象の場合、解析精度が十分でないことがある.複雑な振動現象を評価する場合,現自由度モデルでの解析精度は十分と言えず,筆者らは解析精度をさらに向上させる必要があると考えている.前報において,大規模解析に適用可能な振動解析手法を開発した.本研究では,この開発した手法を用いて船体振動の計算精度を改善することと,開発した振動解析手法の大規模モデルへの適用可能性について検討した.さらに,従来は実施できなかったことであるが,大型かつ複雑構造を有する船体を過去にない詳細度でモデル化し,さらに外部流体との連成を考慮することにより,船体に発生する振動現象を計算機上で再現した.これらの検討結果から,船体振動予測のさらなる精度向上の可能性があることを示した.

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© 2018 The Japan Society For Computational Engineering and Science
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