2025 年 13 巻 3 号 p. 17-
重要な要点
・Multi-energy CT (MECT)におけるヨード密度値の計測に対応した肝臓等価物質をショ糖と塩化ナトリウムの水溶液で作成可能である.
・肝臓におけるヨード密度値は水を基準としたdecomposition 法の場合,その値は正確ではない可能性がある.
・水および水等価物質は,軟部組織と脂肪とヨードによるthree-material decomposition にてヨード密度値が検出されることを考慮する必要がある.
要旨
【目的】Multi-energy CT (MECT)におけるヨード密度値の計測に対応した肝臓等価ファントムを作成しdecomposition 法の違いによる測定値を明らかにすること.
【方法】MECT ファントムのliver ロッドと等価となるようにショ糖と塩化ナトリウムの混合比率を調整し,シーメンス社製CT SOMATOM Force にてliver ロッドと肝臓等価ファントムの実効原子番号とヨード密度値を計測した.MECT ファントムと肝臓等価ファントムを使用した1.0,0.5,0.2 mgI/mL ヨードファントムに対してヨード水と空気を基準物質とした手法と,ヨードと肝臓と脂肪を基準物質としたthreematerial decomposition (3MD)法によりヨード密度値を計測した.
【結果】水1000 mL に対してショ糖155.0 g,塩化ナトリウム16.0 g の溶液はliver ロッドと同等の相対電子密度と実効原子番号であった.肝臓等価ファントムによるヨード量1.0,0.5,0.2 mgI/mL の誤差率は5.2%,8.4%,12.5%であった.
【結論】本研究によって,MECT に対応した肝臓等価物質を作成し,臨床で使用されているヨード造影剤を追加することで,造影CT における3MD 法による肝臓のヨード密度値の値を検証することが可能であることが示唆された.