テクニカルノート
高体重患者を想定した腹部造影CT における低管電圧条件の適正化：物理的画質指標に基づく検証
キーワード:
low tube voltage,
automated tube voltage selection,
noise power spectrum,
task transfer function,
detectability index
2025 年 13 巻 3 号 p. 22-
詳細
2025 年 13 巻 3 号 p. 22-
重要な要点
・Model-based iterative reconstruction の適用は，低管電圧時の画質劣化を抑制し，タスクベースの検出能 (d’) の維持に寄与した．
・患者の体型に応じて管電圧を10 kV 刻みで変更できる機能が，低管電圧撮影の臨床応用の可能性を広げる．
・120 kV におけるノイズ量を基準としたとき，同じCTDIvolでも管電圧が低いほどノイズ量が増加する傾向であるものの，90 kV から110 kV の範囲ではノイズ量の増加はわずかである．
要旨
【目的】低管電圧撮影の臨床適用は患者の体格により困難となる場合がある．本研究の目的は，大柄な患者を想定した腹部造影CT において，120 kV 画像を基準とし，物理的画質指標に基づいて，被ばく線量低減に資する適切な低管電圧条件を明らかにすることである．
【方法】SOMATOM X.cite (Siemens Healthineers) にてMercury 4.0 phantom (Sun Nuclear) の直径31 cm のセクションをスキャンした．基準条件は，管電圧: 120 kV, CTDIvol: 15 mGy, 再構成法: filtered back projection (FBP) である（以下，基準画像）．比較対象の条件は，管電圧: 70〜110 kV、CTDIvol: 5 および10 mGy, 再構成法: ADvanced Modeled Iterative Reconstruction (ADMIRE) である（以下，低管電圧画像）．基準画像と低管電圧画像それぞれのnoise power spectrum (NPS)，task transfer function (TTF)，detectability index (d’) を求めて比較した．
【結果】すべての指標が基準画像を上回る低管電圧画像の条件は，管電圧: 90 および100 kV，CTDIvol: 10 mGy で，NPS は同等，TTF はわずかに高値，d’は最大20%高値だった．これらの条件では，CTDIvolを最大約33%低減可能だった．
【結論】CTDIvol: 10 mGy では90 および100 kV が，120 kV 基準と同等のd’を維持しつつ被ばく線量低減に資する低管電圧条件であることが示された．
