2025 年 13 巻 3 号 p. 27-
重要な点
・ 肝実質では,Liver VNC アルゴリズムによる画像のCT 値とTNC 画像との差は約90%の症例で±5 HU 以内であり,Liver VNC 画像はTNC 画像の代替となり得る.
・ 大動脈と腎皮質では,CT 値の一致度は撮影時相に依存し,動脈相から作成したVNC 画像は門脈相と比べてTNC 画像とのCT 値の一致度が高かった.
・ 皮下脂肪と椎体海綿骨では,TNC 画像とVNC 画像のCT 値差が±10 HU を超え,TNC 画像の代替は困難であった.
要旨
【目的】第5 世代dual-source (DS) CT における標準的なプロトコルによる仮想非造影 (virtual non-contrast: VNC) 画像および肝臓に特化したプロトコルによるVNC 画像と真の非造影 (true non-contrast: TNC) 画像のCT 値の一致度を,臓器別,撮影時相別に比較し,臨床運用における代替可能性と限界を明らかにする.
【方法】dual-energy (DE) を施行された203 例を解析対象とした.TNC 画像に続いて,動脈相,門脈相から標準的なプロトコルによるVNC 画像(VNCA画像,VNCP画像)または肝臓に特化したプロトコルによるVNC 画像(Liver VNCA画像,Liver VNCP画像)を作成した.測定は肝実質,腎皮質,大動脈,傍脊柱筋,脾臓,皮下脂肪,椎体海綿骨とした.TNC 画像とVNC 画像の差(一致度)を求め,5 段階(±5 Hounsfield unit (HU) 以下,±5 を超えて±10 HU 以下,±10 HU を超えて±15 HU 以下,±15 HU を超えて±20 HU 以下,±20 HU を超える)に分類し,±10 HU 以内を代替可能とした.
【結果】肝実質では,Liver VNCA, Liver VNCPの約90%の症例でCT 値差が±5 HU 以下,±10 HU 以下は99%,CT 値差はそれぞれ+1.8 HU, +2.8 HU だった.大動脈および腎皮質ではVNCAよりVNCPの一致度が2~6 HU 低下した.皮下脂肪では±10 HU 以内が5%以下,椎体海綿骨では全例が±20 HU を超えた.
【結論】第5 世代DSCT において,肝実質ではLiver VNC 画像は時相に依存せずTNC 画像の代替となり得るが,腎皮質,大動脈では動脈相によるVNC 画像は代替の可能性があり,皮下脂肪,椎体海綿骨では代替は困難であった.