2025 年 9 巻 s2 号 p. s61-s64
博物館のヴァーチャルツアーは、展示替えにより実際の展示空間と齟齬が生じ、陳腐化しやすいという課題を抱えている。この「陳腐化」を逆手に取り、過去の展示状況をドキュメンテーションする新たな価値として捉え直すことについて、リトアニア国立美術館を事例に考察する。同館は、2019年と2025年の二度にわたる常設展示の大幅な展示替えを行ったが、2020年に公開されたヴァーチャル展示は展示替えの後に更新されていない。これにより、実際の展示空間では既に見られなくなった過去の展示構成が、古いヴァーチャル展示によって記録・保存され、公開されている状況にある。本発表では、ヴァーチャル展示を単なる代替手段ではなく、博物館の歴史性を可視化するドキュメンテーション・ツールとして位置づける視座を提示したい。