日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
短報
研修歯科医に対する介護保険施設での口腔ケアおよび摂食指導研修
船山 さおり伊藤 加代子堀 一浩谷口 裕重辻村 恭憲中村 由紀真柄 仁渡邊 賢礼林 宏和辻 光順酒井 翔悟井上 誠
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2016 年 20 巻 2 号 p. 80-85

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抄録

介護保険施設において,口腔ケアおよび摂食指導を必要としている要介護高齢者は少なくない.今後,研修歯科医が食事の場面に立ち会い,摂食指導をすることが重要であるが,その機会はまだ少ないと考えられる.新潟大学では,特別養護老人ホームを週に1 回訪問し,口腔ケアや摂食指導を行っているが,その際に研修歯科医が2 ~ 3 名ずつ同行して,実際の口腔ケアや摂食指導を研修している.今後,よりよい研修プログラムを提供するため,研修歯科医の介護保険施設における口腔ケアおよび摂食指導の経験の有無や,本プログラムを研修した感想等に関するアンケート調査を実施した.

対象は,2009~2013 年度に,口腔ケアおよび摂食指導の研修を行った本学研修歯科医144 名とし,口腔ケアおよび摂食指導に対する知識・経験の有無について調査した.

その結果,80.4% が口腔ケアの知識があると回答していたが,実際に口腔ケアあるいは摂食指導を経験したことがある者は少なかった(口腔ケア56.6%,摂食指導18.2%).また,大半が,口腔ケアおよび摂食指導が勉強になったと回答していた.口腔ケアあるいは摂食指導に対する歯科専門スタッフの介入価値があると思うと回答した者は,口腔ケアでは82.5%,摂食指導では78.3% と高い割合を示した.

要介護高齢者の数は増加の一途をたどっており,今後,口腔ケアおよび摂食指導において歯科医師が果たす役割は,ますます大きくなっていくと思われる.患者家族やコメディカルに摂食指導をする立場にある歯科医師の臨床研修に,介護保険施設等における口腔ケアおよび摂食指導を導入することは重要であるといえる.

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© 2016 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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