環境感染
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多剤耐性緑膿菌による尿路感染症アウトブレイクの疫学的検討と感染対策
吉本 静雄岡内 里美鉦谷 久美子
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2005 年 20 巻 1 号 p. 37-43

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抄録

平成13年5月から平成14年7月の間に32名の患者から多剤耐性緑膿菌 (MDRP) を検出した. 32症例より33菌株のMDRPが分離され, このうちの28菌株についてPFGEによるDNA解析を実施した結果, 他の症例との疫学的関連性が認められなかった1例と初診時の腹水より検出された1例を除いた25症例26菌株は, その泳動パターンが70%以上の相同性を示し, 近縁株であった. さらに, その中の20例においては90%以上の相同性を示し, ほぼ同一菌株であると考えられた.検出検体は尿が28例, 腹水, 胆汁, 喀痰, 褥瘡が各1例であり, 尿から検出された28例の患者は全て尿道留置カテーテルを使用されていた. また, アウトブレイク病棟での初発例は全てMDRPが検出される前に泌尿器科外来にて尿路処置を受けていた. 以上より今回のアウトブレイクの感染ルートは, 最初に泌尿器科外来にて尿路処置を介した交差伝播が起こり, MDRPを保有した患者が入院することにより病棟に持ち込まれ, 病棟内においては尿道留置カテーテル操作を介して伝播が拡大したと考えられた. さらに環境調査による疫学的検討や尿道留置カテーテル操作手技の検証の結果, 泌尿器科外来では手洗い・洗浄用流し台の周囲環境が感染源である可能性が考えられ, 尿道留置カテーテル操作では集尿バッグ排尿口の管理に問題が判明し, これらに対する対策を実施した結果, アウトブレイクは終息した.

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