日本臨床救急医学会雑誌
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調査・報告
横浜市における老人介護施設の増加が及ぼすCPA搬送への影響とその臨床的特徴
山本 俊郎鈴木 範行伊巻 尚平葛目 正央木下 弘壽道下 一朗中澤 暁雄関根 和彦麻生 秀章菊池 清博
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2008 年 11 巻 4 号 p. 385-391

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抄録

2005年,2006年に横浜市内で発生したCPA症例の救急要請場所を1)介護老人施設(以下,施設),2)一般住宅,3)その他に分けてその動向を検討した。また,CPAの事後検証を行った症例の死亡原因を推定し,その特徴を検討した。2005年,2006年に搬送されたCPA症例数は2,977例,3,008例であった。搬送症例数は,2006年には2005年の100.1% となったが,施設からの割合は298例(10.0%)から344例(11.4%)に微増し,一般住宅の割合は2,228例(74.8%)から2,171例(72.2%)に微減した。施設では不搬送例の割合はそれぞれ8/306(2.6%),19/363(5.2%)と一般住宅やその他に比べて有意に少なかった(p<0.01)。横浜市内の特別養護老人ホームの定員数は介護保険法が施行された2000年の4,242人から2006年の8,356人へと1.97倍に増加していた。2000年に定員数の上位を占めた区は2006年にも上位を占め,施設からのCPA症例の搬送割合が高かった。一方,2000年に下位を占めていた区は2006年には施設からのCPA搬送の少ない区に変わっていた。施設から搬送されるCPAの多い地域は横浜市の辺縁部に位置し,少ない地域は商工業の中心地区が占めていた。施設から搬送されたCPAの死亡原因では内因性の割合が高く,肺炎と気道閉塞の呼吸器系が9例(47.3%)と高率であった。今後ますます施設の分布は偏在し,特定の地域の医療機関にその負担がかかることや,状態が安定しても医療依存度が高まり転院までに時間を要することなど,急性期治療が中心の医療機関の運営に支障をきたすことが予想されることから,高齢者終末期の介護・医療のあり方を再検討する必要があると思われる。

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© 2008 日本臨床救急医学会
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