救急隊が行った過剰な換気で胃内容物が逆流したと思われる突然の心停止症例を経験した。日本版救急蘇生ガイドラインの下地であるAHAガイドライン2005での人工呼吸の勧告では,「過大な換気量または強すぎる換気」が胃の膨満とそれに伴う合併症をきたす要因とされており,その勧告内容が軽視されている可能性を懸念し,実状と課題を調査した。救急隊員38名に対し人工呼吸の勧告についての知識と換気量,換気時間を調査し,逆流発生のリスクを検討した。知識調査では勧告内容は知っていても根拠の理解が46%と低かった。手技は多くの救急隊員が人工呼吸を短い換気時間と過大な換気量で実施していた。5年以上の救急隊経験者で根拠の理解が不十分である者に換気量がより大きい傾向がみられた。結果,人工呼吸の習熟度が不十分であり,逆流発生のリスクを高めると考えられた。今後は勧告内容を習熟し手技を確実に身に付けることが必須であると考えられた。