2003 年 6 巻 4 号 p. 412-415
中心静脈カテーテル留置目的に右大腿静脈穿刺時,まれな合併症によリショック状態となった1例を経験したので報告する。症例は78歳,女性。上行結腸癌の手術後,栄養補給目的に右大腿静脈より中心静脈カテーテルを挿入した。挿入時は問題なくカテーテルを留置したと思われたが,その1時間後ショック状態となり,ICU管理となった。出血性ショックと診断し,止血目的に鼠径部を切開したところ,右死冠損傷からの出血と判明し,死冠を結繁して救命し得た。中心静脈カテーテル挿入に伴う合併症は,おもに血管穿刺時の合併症とカテーテル挿入中の合併症に大別されるが,大腿静脈穿刺時の合併症の場合は,随伴動脈穿刺以外ほとんど合併症がないとされている。しかし,今回のように,死冠損傷というまれな合併症もあることを念頭におく必要があると思われた。この合併症の予防としては,穿刺部の解剖を熟知しておくことと,あまり深く穿刺しないことが重要と思われた。