日本臨床救急医学会雑誌
Online ISSN : 2187-9001
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6 巻, 4 号
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総説
  • 伊藤 敏孝, 金子 直之, 則尾 弘文, 清住 哲郎, 伊藤 祐佳, 岡田 芳明
    原稿種別: 総説
    2003 年6 巻4 号 p. 357-364
    発行日: 2003/08/31
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    アルコール性ケトアシドーシス(alcoholic ketoacidosis,以下AKAと略す)は,アルコール常用者で栄養不良と,それに引き続く脱水が契機となり発症する疾患である。その特徴は陰イオンギャップの開大を伴う代謝性アシドーシスと,β-ヒドロキシ酪酸優位なケトン体の上昇である。本疾患はアメリカでは一般に広く認識された疾患であるが,本邦ではまだ十分に認識されていない。今回われわれは,AKAに関し当院での治療経験および文献的考察をもとに,疾患概念,疫学,病態生理,診断(臨床所見,検査所見),治療,合併症,剖検所見,予後について述べる。また,本邦で提唱されている大酒家突然死症候群とAKAとの関連についても述べた。

原著
  • 水島 靖明, 溝端 康光, 松岡 哲也, 横田 順―朗
    原稿種別: 原著
    2003 年6 巻4 号 p. 365-370
    発行日: 2003/08/31
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    われわれは危機管理の一環として,日常行われる侵襲的処置を処置簿に登録し,データーベース化することにより合併症の種類,頻度などを分析している。今回は,それらの合併症を分析し,誘発する危険因子を抽出する試みを行った。対象としては2001年7月までの2年間に施行されたすべての中心静脈穿刺(CV)1,366回,胸腔ドレナージ(CT)260回,脳室ドレナージ(IC)145回,気管切開(T)125回を前向きに検討し,施行者の要因,患者の疾患や特徴,施行時の要因を解析し危険因子を抽出した。その結果,合併症(位置異常を含む)はCV 11.5%,CT 11.9%,IC 16.6%,T6.4%に認め,誘発する危険因子としていくつかの要因が見つかった。処置簿に記録することにより合併症の種類,頻度が明確となり,インフォームド・コンセントでの有用な情報となり得ると考えられた。今後,さらに合併症を減少させるためには,合併症を増加させる危険因子の周知,これを回避するための工夫と教育,施行者個別への指導が必要になると思われた。

  • 門間 正子, 井瀧 千恵子
    原稿種別: 原著
    2003 年6 巻4 号 p. 371-377
    発行日: 2003/08/31
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    救急・集中治療の職場環境が看護師(以下,Ns)に及ぼす影響について,1年間の感情の変化を調査し,免疫系の反応として好中球,リンパ球分析を指標として検討した。新入Ns,教育Nsともに継続した精神的疲労状態にあり,その程度は新人Nsにおいて顕著であった。新人Nsの精神的疲労状態は配属3か月後に緩和の傾向がみられたが,その後,再び増強していた。また,新人Nsは経験年数の短い者の方が配属時にストレス状態が強かった。好中球,リンパ球とストレス状態との関連をみると,配属1年後においてストレス状態が強い者で新人Nsでは好中球割合が高く,教育Nsではリンパ球割合が低い傾向を示した。しかし,ほかの時期では関連は認められず,心身のストレス状態が免疫機能に直接反映していたかどうかは不明であった。以上から,救急・集中治療病棟に勤務するNsの精神的ストレスは1年間のなかでも時期により違いがあること,精神的ストレスの程度や時期は,Nsの立場や経験年数により異なることが明らかになり,これらを考慮したメンタルヘルスが重要であるといえよう。

  • 森村 尚登, 杉山 貢, 橘田 要一, 柴本 真里, 中村 京太
    原稿種別: 原著
    2003 年6 巻4 号 p. 378-385
    発行日: 2003/08/31
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    的確な重症度と緊急度判断に基づく,適切な搬送先医療機関選定(フィールドトリアージ)は病院前救護体制の基本である。1999年6月~2000年3月の間の25日間に横浜市消防局救急隊が救急車同乗研修に参加した医師とともに救急搬送した371例を対象とし,救急救命士と同乗医師の選定医療機関カテゴリーと選定理由を調査し,後日救急認定医により同僚審査を行った。選定医療機関カテゴリーの不一致は156例(全症例の42.3%)であった。うち81例は重症度・緊急度の評価差に起因し,42例は評価差ではなく地域医療機関の受け入れ体制に関連していた。またフィールドトリアージ精度を症候別に検討した結果,生理学的パラメーターの異常がない症例で,精度が低い傾向にあることが分かった。今後は十分なメデイカルコントロールに基づくトリアージツールの作成と,ツールが定めるカテゴリーに基づいた地域医療機関受け入れ体制の強化が重要と考えられる。

  • 中島 正―, 高松 純, 為広 一仁, 島 弘志, 井手 道雄, 瀧 健治
    原稿種別: 原著
    2003 年6 巻4 号 p. 386-391
    発行日: 2003/08/31
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    一酸化炭素(CO)中毒の初期治療を怠ると,間歇型CO中毒へ移行して精神神経障害を残す恐れがある。この間歇型への移行の原因とその対策を検討する目的で,高気圧酸素療法(HBOT)(2.5絶対気圧,60分間,7回)を施行したCO中毒35症例(男性23名,女性12名)を対象として,重症度分類(潜在性15名,軽症9名,中等度9名,重症2名)と原因別分類(火災15名,排気ガス12名,火鉢8名)で,HBOT前後におけるCO-Hb値とMet-Hb値の推移を調べた。重症度分類では差が認められなかったが,原因別分類では火災群で,CO-Hb値がHBOT施行翌日にもとの値にリバウンドする現象が1週間くらい持続していた。この結果より,CO中毒の原因によって間歇型CO中毒が発生する恐れがあり,HBOTの施行方法を検討する余地があると示唆された。

症例報告
  • 藤芳 直彦, 中江 晴彦, 木村 眞一, 吉岡 伴樹, 渋谷 正徳, 大森 万里子
    原稿種別: 症例報告
    2003 年6 巻4 号 p. 392-397
    発行日: 2003/08/31
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    妊娠中毒症の合併がなかった産褥婦に,皮質盲と痙攣が発症した1例を経験した。症例は32歳,女性。帝王切開後4日目に突然盲目と痙攣発作を発症した。対症療法により盲目と痙攣は軽快し,一過性であった。また頭部CT上で,ほぼ同時期に低吸収を後頭葉に認めたが,まもなくこの所見も消失し,一過性であった。以上より盲目は一過性の皮質盲と考えられた。皮質盲の原因は多々あるが,痙攣を発症した妊産婦に合併する盲目は子癇による皮質盲がまず考えられる。この盲目は一過性と考えられ,対症療法を行いつつ視力の回復を期待してよいと思われた。

  • 大谷 典生, 椎野 泰和, 三井 浩, 田中 和豊, 石原 康子, 青木 光広, 石松 伸一
    原稿種別: 症例報告
    2003 年6 巻4 号 p. 398-401
    発行日: 2003/08/31
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    症例は46歳,男性。深夜に泥酔者として保護所に収容された。翌朝になり,保護所内で意識レベル低下(JCS Ⅲ-300)を認め,当院救命救急センターに搬送された。来院時pH 7.146,血糖2,022mg/dl,血清浸透圧433mOsm/l,HCO3 11.2mmol/l,エタノール血中濃度10.0mg/dl以下であり,mixed typeの糖尿病性昏睡と診断した。ICU入室後より輸液・電解質管理およびインスリン持続投与による血糖管理を施行した。第3病日には意識レベル清明となり,各種合併症もなく経過した。第7病日に糖尿病精査・インスリンコントロール目的で近医へ転院した。この症例では飲酒の有無を確認しないまま,高血糖に伴う“ケトン臭”をもって患者を泥酔者と誤認してしまい,その先入観が病態のさらなる増悪を来したものと思われた。

  • 品川 弥人, 秋山 久尚, 相馬 一亥, 大和田 隆
    原稿種別: 症例報告
    2003 年6 巻4 号 p. 402-407
    発行日: 2003/08/31
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    プロポフォールは短時間作用型麻酔薬として,集中治療での鎮静目的に使用されているが,海外を中心としてとくに小児例に横紋筋融解症の合併例が散見される。今回,われわれはプロポフォール持続投与によると考え弓れる,著明な横紋筋融解症の1成人例を経験したので報告する。症例は意識障害で搬送された36歳の男性。来院時より不穏を認め,鎮静目的でプロポフォールの投与を開始した。頭部CT,MRI検査で左前頭葉に脳腫瘍を認め,現病歴や現症から痙攣後の意識障害と診断した。抗痙攣薬を併用し,推奨容量内でプロポフォール持続投与を継続したが,第2病日より暗褐色尿,CK値の上昇が出現し,最高194,550 IU/lまで上昇した。ただちにプロポフォールの投与を中止,大量輸液を施行したところCK値は徐々に改善した。プロポフォール持続投与により,成人例においても著明な横紋筋融解症を認めることがあり,とくに痙攣などほかの横紋筋融解症発症の危険因子をもつ症例での使用は注意が必要と考えられた。

  • ―肺機能の経時評価を加えて一
    岡川 武日児, 浅岡 峰雄, 中野 浩, 浅井 邦彦, 大山 恭司
    原稿種別: 症例報告
    2003 年6 巻4 号 p. 408-411
    発行日: 2003/08/31
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    症例は49歳,男性。2001年4月26日,軽トラックを運転中,ガードレールに衝突した後,対向車と接触し車内に閉じ込められた。救出に約4分かかり,その間に心肺停止状態となったため,ラリンゲアルマスクによる気道確保と人工呼吸,カルディオポンプ®による心臓マッサージが開始され,搬送途中に心拍が再開した。広範な前方型フレイルチェストに対し,人工呼吸によるpneumatic stabilizationを施行した。また血胸,心囊内血液貯留にはそれぞれドレナージを行った。pneumatic stabilizationによる保存的加療で前胸部の変形はほぼ完全に回復した。約1年後の肺機能も十分に改善していた。

  • 清水 聡, 広間 文彦, 相馬 祐人, 二階堂 修, 佐々木 敏雄, 広瀬 裕二, 陳 明俊
    原稿種別: 症例報告
    2003 年6 巻4 号 p. 412-415
    発行日: 2003/08/31
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    中心静脈カテーテル留置目的に右大腿静脈穿刺時,まれな合併症によリショック状態となった1例を経験したので報告する。症例は78歳,女性。上行結腸癌の手術後,栄養補給目的に右大腿静脈より中心静脈カテーテルを挿入した。挿入時は問題なくカテーテルを留置したと思われたが,その1時間後ショック状態となり,ICU管理となった。出血性ショックと診断し,止血目的に鼠径部を切開したところ,右死冠損傷からの出血と判明し,死冠を結繁して救命し得た。中心静脈カテーテル挿入に伴う合併症は,おもに血管穿刺時の合併症とカテーテル挿入中の合併症に大別されるが,大腿静脈穿刺時の合併症の場合は,随伴動脈穿刺以外ほとんど合併症がないとされている。しかし,今回のように,死冠損傷というまれな合併症もあることを念頭におく必要があると思われた。この合併症の予防としては,穿刺部の解剖を熟知しておくことと,あまり深く穿刺しないことが重要と思われた。

  • 田山 歩, 中永 士師明, 和田 博, 文 宣貴, 田中 博之, 多治見 公高, 遠藤 重厚
    原稿種別: 症例報告
    2003 年6 巻4 号 p. 416-420
    発行日: 2003/08/31
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    水疱性類天疱療治療中に血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome:HPS)を発症し,持続血液濾過透析(continuous hemodiafiltration:CHDF),血漿交換(plasma exchange:PE)を施行した1例を報告する。患者は72歳女性でステロイド,免疫抑制剤にて治療中,肺炎を合併した。骨髄塗沫標本で確定診断を得て,自己抗体,サイトカイン除去目的にCHDFとPEを行った。PE施行前に高値を示していたIL-6,IL-18,INF-γ値はPE後には低下し,血球は再上昇,水疱形成は減少した。しかし,IL-6,IL-18,INF‐γ値はPE終了後に再上昇し,患者はICU入室19日目に人工呼吸器による圧損傷から縦隔気腫を併発し死亡した。今回,CHDFおよびPE併用療法でサイトカインを減少させることができた。

調査・報告
  • 一湘南救急活動研究協議会アンケート調査の結果から一
    佐宗 昇, 杉本 千絵, 花井 正樹, 杉山 徳幸, 相原 三好, 山本 五十年
    原稿種別: 調査・報告
    2003 年6 巻4 号 p. 421-426
    発行日: 2003/08/31
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    湘南救急活動研究協議会加盟18消防本部,および所属救急隊員569名を対象として,平成13年度に感染防止に関するアンケート調査を実施し,感染防止に関する認識や標準予防策の実施状況を検討した。当初,標準予防策に基づいた現場活動は十分ではなかったが,生涯教育講座救急セミナーなどの教育活動の結果,その認識は高まってきた。しかし,その取り組みには組織的な対策が伴っていないところがあった。針刺し事故など,感染事故対策は消防本部として不十分であり,感染対策マニュアルは一部の消防本部で運用されているにすぎなかった。また,感染情報提供に関する消防機関と医療機関との連携も整備されていなかった。救急隊員はプレホスピタルの医療従事者であり,感染予防・対策に十分な認識をもち,積極的に現場活動を遂行していかなければならない。効率的で科学的な予防法を消防機関として取り入れ,感染教育を推進する必要がある。現在,協議会においては感染予防マニュアルを作成し,統一的な指針を示しており,消防機関として感染予防のシステムと環境の整備を進める必要がある。

  • ―ドクターカーと消防ヘリコプターのドッキング方式―
    有吉 孝一, 山口 裕, 吉川 勝宇, 大塚 祐史, 宮本 義久, 佐藤 慎一, 立道 清, 花谷 好人
    原稿種別: 調査・報告
    2003 年6 巻4 号 p. 427-433
    発行日: 2003/08/31
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    1999年7月,神戸市消防局の救急救命士が当救命救急センターに待機して運行する,ドクターカーシステムをスタートさせた。このドクターカーチームと消防ヘリチームとのドッキング方式による病院前救護を試みてきた。1998年1月から2002年12月までの5年間,神戸市消防局における救急患者のヘリコプター搬送133件,135症例を検討した。この間のドクターカーは440回の出動があり,うち両者のドッキングは33件,34症例であった。また,ヘリコプターによる現場への医師派遣は16件あった。消防ヘリコプターをドクターヘリコプターとして利用するわれわれの方法は,厚生労働省のドクターヘリ事業と比較して,①経費負担がわずかである,②多目的利用できる,③救急救命士制度と相互補完できる,という点に特徴がある。

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