日本臨床救急医学会雑誌
Online ISSN : 2187-9001
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8 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
臨床経験
  • 一本疾患の啓蒙の重要性―
    小島 直樹, 石田 順朗, 寺田 泰蔵, 稲川 博司, 岡田 保誠, 清水 誠一郎
    原稿種別: 臨床経験
    2005 年 8 巻 5 号 p. 355-360
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    最近,われわれは脾摘後に関連した劇症型感染症を3例,小脾症による脾機能低下を背景としたと考えられた劇症型感染症を1例経験した。4例はいずれも発症3日以内に敗血症性ショックに陥り,播種性血管内凝固障害,腎機能障害などの多臓器不全となった。4例中1例は救命し得たが,3例は集中治療にもかかわらず入院後3日以内に死に至った。脾機能低下を背景とする劇症型感染症の生命予後は非常に不良であると考えられた。したがって,本病態の救命率の改善には第一に予防策の徹底が必要と思われた。また,第二には症状が軽度の段階から脾機能低下症例では劇症型感染症に移行する可能性があることを念頭に置いて治療を開始することが必要であると考えられた。そのためにも初診に携わる医療機関のみならず患者側においても本病態に対する啓蒙が非常に重要であると考えられた。

調査・報告
  • 渡邊 孝, 森脇 義弘, 杉山 貢, Roscioni AM
    原稿種別: 調査・報告
    2005 年 8 巻 5 号 p. 361-368
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    歴史や文化が異なるイタリア・ローマでの救急医療体制を視察し,本邦での活用の可能性や問題点を考察した。ローマでは,救急医療管制員(本邦の指令管制員),ドクターカーや救急自動車等に乗務する院外救急医療要員(本邦の救急隊員)は,資格として看護師や医師であるというだけでなく,救急外来に従事する医師や看護師などとともに,国立病院の職員である。そのため,院外救急医療―搬送―病院内初期診療の継続性が期待できる。反面,救急・災害現場での救助担当機関や消防機関との連携が課題と思われた。救急自動車の小型化,現場医療と搬送の機能分担,待機ステーションの配置修正や救急自動車の巡回,搬送先医療機関を直近の救急病院とし合計活動時間の短縮を図るなどの工夫による現場到着時間短縮,救急医療管制員の傷病者トリアージによる救急医療需要と供給の調整などは一考に値すると思われた。

  • 小延 俊文, 奥地 一夫, 福島 英賢, 畑 倫明, 則本 和伸, 植山 徹, 關 匡彦, 西口 貴司, 中村 達也
    原稿種別: 調査・報告
    2005 年 8 巻 5 号 p. 369-372
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    ショックパンツ(Military anti-shock trousers;MAST)は,1991年「救急隊員の行う応急処置などの基準」の改正で,拡大9項目のなかに入っている。しかし,その使用頻度は低く,処置に伴う有効性の検証も行われていない。〔目的〕奈良県5消防本部のMAST積載状況,MAST使用状況などの現状を把握し,今後の課題を検討する。〔結果〕5消防の救急車台数は24台でMAST積載率は83%であった。2年間での外傷患者に対する病院前使用はCPA 1例で,結果的には大動脈損傷によるものであった。〔結論〕外傷初期治療の標準化を目的としたJPTECコースではショックパンツに関してのプログラムはない。今後,病院前外傷治療におけるMAST使用適応に関して再検討が必要と考えられ,とくに頭部外傷や胸部外傷合併の可能性のあるCPA例に対して病院前MASTの適応はないものと考えられた。

症例報告
  • 小林 誠人, 冨岡 正雄, 中村 雅彦, 松山 重成, 宮本 哲也, 川崎 英之, 中山 伸一, 小澤 修一
    原稿種別: 症例報告
    2005 年 8 巻 5 号 p. 373-377
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    車内閉じ込め現場で輪状甲状靱帯切開を施行し低酸素血症を回避し得た顔面外傷を伴う重症頭部外傷例を経験した。症例は20歳,男性で乗用車の横転事故にて受傷した。ドクターカー現場到着時,患者の顔面は乗用車のサイドピラーと地面に挟まれた状態で運転席に閉じ込められていた。サイドピラーを離断し観察を施行した。意識レベルはGCS E1-V1-M1,自発呼吸は弱く認めたものの,口唇の裂挫創,大量の回腔内血液貯留のため気道閉塞状態であった。撓骨動脈は触知可能であった。状況より経口気管挿管による気道確保は困難と判断し,輪状甲状靱帯切開を施行した。気管内より大量の血液を吸引,補助換気下に車外救出を施行した。主な外傷は顔面損傷,頬骨骨折,頭蓋底骨折,びまん性脳損傷などであったが,集中治療の後,第19病日独歩で後方病院へ転医となった。輸状甲状靱帯切開は救急現場でも施行可能な迅速,確実な気道確保の方法であり, ドクターカーに乗車する救急医の必須手技の1つと考える。

  • 一重症例2例の経験を通して一
    金子 直之, 千田 礼子, 岡田 芳明
    原稿種別: 症例報告
    2005 年 8 巻 5 号 p. 378-384
    発行日: 2005/12/31
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    近年,本邦でマムシ咬傷の重症例は比較的まれであるが,われわれはタイプの異なる重症例を2例経験し,若干の知見を得たので報告する。症例1は78歳,女性。右足関節部に受咬。来院時,右下腿腫脹のほかは血液学的検査を含め特記すべき所見なし。抗毒素血清とセファランチンを投与。しかしその後腎不全を発症し,5病日以降,減張切開・持続血液透析を含む集中治療を行ったが21病日に死亡した。症例2は32歳,男性。右示指に受咬。来院時に血小板数は2.1万/μlで出血傾向を認めた。セファランチンのみ投与。早期大量輸液と強制利尿を行い,翌日腫脹が進行したため減張切開施行,以後速やかに症状は軽快した。治療においては来院時所見とともに,その後の腫脹の変化,筋原性酵素の推移などから重症化を予測し,先手を打って治療することが重要である。早期大量輸液と強制利尿は推奨すべき治療であり, また腫脹が進行する場合は迷わず減張切開を行うべきである。

  • 渡邉 出, 中尾 昭公, 小野寺 睦雄, 阿部 知伸, 有嶋 拓郎, 福岡 敏雄, 榊原 陽子, 真弓 俊彦, 高橋 英夫, 武澤 純
    原稿種別: 症例報告
    2005 年 8 巻 5 号 p. 385-388
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    近年,カテコラミン不応性敗血症性ショックにおけるバソプレッシンの有効性が注目されてきている。今回われわれは,バソプレッシンが有効であった術後MRSA腸炎による敗血症性ショックの1例を経験した。症例は64歳,男性。膵全摘術後,MRSA腸炎により急速に敗血症性ショックとなりICU入室となった。大量の輸液,塩酸ドパミン,塩酸ドブタミン10µg/kg/min,ノルエピネフリン0.4µg/kg/minの投与によっても,循環動態は不安定であったが,バソプレッシン0.033 IU/minの持続投与開始直後より安定し,上記カテコラミンを減量し得た。また,腹部超音波検査にても門脈血流の低下は認めず,臨床経過は順調で入室後10日日でICUを退室した。今回のカテコラミン不応性敗血症性ショック症例においては,パソプレッシンの有効性が示唆された。

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