日本遺伝子診療学会誌
Online ISSN : 2759-6060
原著
片麻痺性片頭痛(HM)におけるチャネル病遺伝子のバリアント解析
小田 いつき團野 大介多田 陽香池川 敦子中村 朱美北村 重和平野 牧人寒川 真竹島 多賀夫永井 義隆西郷 和真
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2025 年 2 巻 1 号 p. 7-11

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抄録

【背景・目的】日本人の片頭痛有病率は8%であり、病型分類の中には遺伝性も存在し、原因遺伝子が報告されている。しかし、片頭痛の遺伝学的検査による診断は積極的に行われておらず保険適応の対象ともされていない。本研究では、片麻痺性片頭痛(Hemiplegic migraine: HM)と診断された患者を対象に、片頭痛を伴う疾患やチャネル病の遺伝子の遺伝学的検査を行った。その解析で検出された遺伝子やバリアント評価について報告する。

【方法】HMと診断された45症例を対象に家族性片麻痺性片頭痛(Familial hemiplegic migraine: FHM)の中で原因遺伝子(CACNA1A, ATP1A2, SCN1A)を含めたチャネル病やてんかん・神経疾患に関わる遺伝子など約320遺伝子を対象に網羅的に遺伝学的検査を行った。遺伝学的検査は末梢血由来DNAを用いて次世代シークエンサーで解析した。

【結果】FHMの原因遺伝子とされるATP1A2は5症例、SCN1Aは4症例でバリアントが検出された。その他にも、チャネル病に関与する遺伝子もバリアントが検出された。チャネル病に関する遺伝子の中、ATP1A3で検出されたバリアントは病的意義不明(Variant of uncertain significance: VUS)な評価であった。

【考察】本研究では、FHMやそれ以外のてんかんや神経疾患に関わる遺伝学的検査を行い、複数のバリアントが検出されたが、VUSの評価となるバリアントであった。これらのことよりバリアントを蓄積し、遺伝型と表現型との相関を明らかにすることで、最適な治療選択や頭痛以外の臨床症状に対する予防的な検査に繋がると考える。

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