日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
多発外傷の治療経過で遅発性に認めた胸腹部損傷に対し緊急手術を要した6症例
水 大介徳田 剛宏林 卓郎渥美 生弘有吉 孝一佐藤 愼一
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2013 年 20 巻 1 号 p. 70-74

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抄録
外傷治療では経過中に新たな損傷が明らかになることがある。特に胸腹部外傷の臨床診断の遅れは致命的になる。2009年4月~2010年7月に当院入院後,遅発性に顕著化した胸腹部損傷に対し緊急手術を要した多発外傷患者は6症例あった。平均年齢は54±22歳。Injury severity score(ISS)は19~43であり,受傷機転は交通外傷4例,高所転落2例であった。Delayed injuryの内訳は横隔膜損傷3例,肋間動脈損傷2例,腸間膜損傷1例であり,循環呼吸状態の悪化が認識されるまでは5~95時間を要していた。2例は死亡した。多発外傷では初療時に全ての損傷を認知することは難しく,遅発性に顕著化してくる損傷を完全に防ぐことは困難である。肋間動脈損傷や横隔膜損傷はその主な原因と考えられる。多発外傷の集中治療管理では,初療時の損傷のみでなく,多発肋骨骨折などの遅発性損傷のriskを認識した全身管理が重要になる。
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© 2013 日本集中治療医学会
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