本稿では,コプト語グノーシス主義文書の動詞・目的語構文研究を目的として,ユダの福音書(チャコス写本収録)を中心とした初期コプト語写本の TEI XMLコーパス構築の方法論と成果を報告する.TEI P5ガイドラインに基づく符号化スキーマを設計し,サイード方言の形態統語的特性に対応した動詞・項構造のアノテーション体系を構築した.具体的には,他動詞・自動詞の区別,直接目的語の標示形式,および名詞句・不定詞句を目的語とする構造的交替を精密に記述可能なタグセットを提案する.本コーパスは Coptic SCRIPTORIUMとの互換性を考慮しつつ,グノーシス主義文書に特有の神学語彙を含む動詞・目的語の共起パターンの体系的検索・定量分析を可能にする基盤を提供する.本稿ではコーパス設計の原則および符号化事例を示したうえで,今後の言語学的分析・文体統計学的分析への展望を述べる.