2017 年 28 巻 2 号 p. 84-93
我が国では発酵食品が数多く生産されており、厳密な微生物制御がなされるよう仕込み条件が極めて巧妙に設定されている。その製法の発展は経験的伝承に基づくものが多く、微生物の存在確認さえままならない太古から再現性良く特定の微生物を優勢化させるノウハウが育まれていることに驚嘆せざるを得ない。発酵食品の細菌叢研究の歴史は古いが、昨今の次世代シークエンス法を用いた 16S rRNA メタゲノム解析の発展によって、より詳細な情報を得ることが可能になった。筆者の在住する石川県の発酵食品を中心に改めて細菌叢を解析すると、様々な菌種がせめぎ合い優勢化する様子や、同一食品でも製品ごとに異なる菌種が優勢化する様子など、バラエティ豊かな細菌叢が垣間見えた。仕込みに米麹を用いる「かぶらずし」では、清酒生もとの優勢乳酸菌種として知られる Lactobacillus sakei が顕著に増殖し、能登地方の「なれずし」では製品ごとに異なる Lactobacillus 属や Pediococcus 属乳酸菌が優勢化していた。また「山廃もと」では、発酵初期に通常みられる硝酸還元菌がほぼ検出されないなど、乳酸菌の優勢化という大原則は守られながらも、どのように頑健さとゆらぎを持って最終的な細菌叢が形成されるのか、興味惹かれる結果を得ている。