日本乳酸菌学会誌
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総説
「動物用抗菌性物質製剤の慎重使用」下における プロバイオティクスへの期待
塚原 隆充
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2022 年 33 巻 2 号 p. 86-93

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抄録

家畜への抗菌剤投与は、生産の安定化及び家畜の健康維持にとって重要である。一方で、耐性菌発生リスクは、ヒト及び家畜の医療へ長期的に悪影響を及ぼす懸念があることから、今後、家畜への抗菌剤使用は縮小傾向となり、代替物による運用が拡大すると予想される。代替物の中で、プロバイオティクスは有力な候補として挙げられる。一般的に、プロバイオティクスの効能は大きく 3 点に集約される。①免疫の活性化を含む宿主腸管環境の健全性維持、②競合排除を含む病原菌の腸管内定着阻止、③プロバイオティクスもしくは腸内細菌が生産する代謝物による畜肉生産の改善、である。本稿ではこれらの機能を下地として、抗菌剤の代替が可能かといった点に加え、近年問題となっているウイルス性疾患の予防効果についてブタ流行性下痢ウイルスを例に言及するほか、抗菌剤投与による常在腸内細菌叢撹乱の緩和効果についても言及する。

プロバイオティクスは家畜の免疫状態や常在腸内細菌叢によって効果が左右されるため、農場内の疾病動向など常に農場内の動静を考慮する必要があるが、飼料高騰など様々な喫緊の課題に柔軟に対応できる素材として、今後、より期待が高まると考えられる。

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© 2022 日本乳酸菌学会
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