日本乳酸菌学会誌
Online ISSN : 2186-5833
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33 巻, 2 号
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総説
  • 山本 憲二
    原稿種別: 総説
    2022 年 33 巻 2 号 p. 67-76
    発行日: 2022/06/27
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー

    日本乳酸菌学会の設立 30 周年を迎えた昨今の乳酸菌およびビフィズス菌に関する研究の発展は目覚ましいものがある。とりわけ、ビフィズス菌の研究分野はこの十数年で著しく進展した分野の一つであると言っても過言ではない。すなわち、ビフィズス菌の母乳オリゴ糖に対する資化経路が明らかにされ、特にトランスポーターについての研究が進み、宿主の腸管におけるビフィズスフローラの形成との関わりが明らかになってきた。さらに、異なるビフィズス菌種間のクロスフィーディングの合理的なメカニズムがトランスポーターの知見を基にして明らかになってきている。また、貧栄養環境におけるビフィズス菌の生存戦略として具備されたと考えられる難消化性糖質に対する分解酵素や腸管への接着因子などが見出され、さらに抗老化作用やアルツハイマー病、パーキンソン病などの疾患との関わりが示唆されている。一方、乳酸菌についての研究も大きな進展が見られ、プロバイオティクスとしての乳酸菌が分泌する菌体外多糖の構造や機能の研究が著しく進展した。本総説ではこれらの新しい知見について概説する。

  • 谷澤 靖洋
    原稿種別: 総説
    2022 年 33 巻 2 号 p. 77-85
    発行日: 2022/06/27
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー

    多くの学術雑誌では論文掲載の条件として新規に決定された塩基配列情報を DNA Data Bank of Japan(DDBJ)を始めとする公共塩基配列データベースに登録することが求められている。登録されたデータは誰でも制限なく参照・再利用することができるため、公共塩基配列データベースは生命科学を支えるデータ基盤として貢献してきた。乳酸菌においては 2000 年代初頭に初めて全ゲノム配列が決定されて以来、約 20 年間で五千件を超えるゲノム配列がデータベースに登録されてきた。本総説ではデータベースに登録された様々なゲノム配列を概観することで乳酸菌ゲノム解析における研究動向を振り返ってみたい。

  • 塚原 隆充
    原稿種別: 総説
    2022 年 33 巻 2 号 p. 86-93
    発行日: 2022/06/27
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー

    家畜への抗菌剤投与は、生産の安定化及び家畜の健康維持にとって重要である。一方で、耐性菌発生リスクは、ヒト及び家畜の医療へ長期的に悪影響を及ぼす懸念があることから、今後、家畜への抗菌剤使用は縮小傾向となり、代替物による運用が拡大すると予想される。代替物の中で、プロバイオティクスは有力な候補として挙げられる。一般的に、プロバイオティクスの効能は大きく 3 点に集約される。①免疫の活性化を含む宿主腸管環境の健全性維持、②競合排除を含む病原菌の腸管内定着阻止、③プロバイオティクスもしくは腸内細菌が生産する代謝物による畜肉生産の改善、である。本稿ではこれらの機能を下地として、抗菌剤の代替が可能かといった点に加え、近年問題となっているウイルス性疾患の予防効果についてブタ流行性下痢ウイルスを例に言及するほか、抗菌剤投与による常在腸内細菌叢撹乱の緩和効果についても言及する。

    プロバイオティクスは家畜の免疫状態や常在腸内細菌叢によって効果が左右されるため、農場内の疾病動向など常に農場内の動静を考慮する必要があるが、飼料高騰など様々な喫緊の課題に柔軟に対応できる素材として、今後、より期待が高まると考えられる。

  • 牧野 磨音, 清水 謙多郎, 門田 幸二
    原稿種別: 総説
    2022 年 33 巻 2 号 p. 94-103
    発行日: 2022/06/27
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー

    遺伝子発現データは、各行に遺伝子、各列にサンプルが配置された数値行列のことを指し、各要素には対応するサンプル中の遺伝子がどれだけ働いているかを表す発現量の数値情報が格納されている。本稿では、第 15 回で得た 2,949 遺伝子 × 9 サンプルからなる Lactobacillus rhamnosus GG の酸ストレス応答を調べた数値行列データを用いる。まず、データ解析環境 RStudio の基本的な利用法として、パッケージのインストールやロードといった基礎的な事柄を述べる。次に、似た発現パターンを示すサンプルのクラスタリングについて、その意義や目的、そして結果の解釈について述べる。遺伝子のクラスタリングについては、RNA-seq 用の代表的なパッケージである MBCluster.Seq について、その概要と入出力形式を述べる。最後に、我々が最近開発したMBCluster.Seq の改良版という位置づけの MBCdeg 法について紹介する。ウェブサイト(R で塩基配列解析のサブ(URL: http://www.iu.a.u-tokyo.ac.jp/kadota/r_seq2.html)中のウェブ資料(以下、W)を併用してほしい。

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