抄録
UNEPより各国の水銀大気排出インベントリー調査が始まり,日本でも水銀排出源の見直しと排出量の精緻化が進められている。産業施設からの水銀排出インベントリーと関連して,簡便なマテリアルフローツールキットの開発は必要である。本研究では視覚的なシステムダイナミックスソフトウェアであるVenim DSSを用い,排出源として化石燃料を用いた火力発電や石油精製,鉄鋼製造,非鉄金属製錬,セメント製造,石灰石製造,パルプ・製紙製造などを対象とした。計算からは,20~25tonが大気に排出され,この内訳としてフライアッシュなどセメント副原料へのループの寄与を検討し,Vensimモデルにより有害微量金属の移動評価,排出量予測が可能である,パラメーター変更で予防的アプローチが可能である,河川・海洋と土壌に影響を与える下水汚泥からのフローの見直しと市中保有からの排出を検討する必要があるなどのことを明らかにした。