抄録
目的
平成21年度の東部訪問看護事業部の訪問看護対象者262名、その中でひとり親家庭は22事例であった。ひとり親家庭の多くは多様な事情を抱えており個別性も高いため事例検討を通して看護内容を整理して見直すこととした。
方法
1.平成21年8月〜平成22年2月に開催した事例検討会(月1回)で使用した担当看護師が記載した記録用紙と逐語録の分析。
2.平成23年4月〜8月に2事例を取り上げて事例検討を行い、看護内容をまとめた。
結果
1.全事例に共通して相談相手がいない、または不足していた。
2.ひとり親家庭への看護(22事例):全事例で、看護師は保健所を中心に医療機関、療育機関など複数の関係機関と連携を取っていた。訪問看護師は8割以上の事例に対して医療ケア、療育、相談、関係機関連絡、危機管理を実施していた。
3. 2事例に対する看護内容:家庭の問題により生活が安定しない事例Aでは、看護導入時の配慮として「母を急がせず、関係を保ちながら子どもの成長発達を最優先に支援する」ことに心がけた。訪問看護開始後、療育機関との関わりを持つことができた。就労と家事・育児・介護の両立に励む事例Bでは「仕事を続けたいという母の気持ちを汲み取り、重症児の安全に配慮しながらケアを実施する」ことで母の心情に変化が見られた。母親はそれまで拒否してきた関係機関との話し合いの場に出席することができるようになった。
考察
看護師は家族の生活スタイルを尊重し家族と重症児に必要な支援を見きわめながら慎重に関わっていた。どの事例も訪問看護開始後に徐々にだが変化はみられ、関係機関連携や必要なリハビリの開始などの成果があらわれていた。看護師は家族の相談に乗りながら信頼関係を築き関係機関との橋渡しなど、ひとり親家庭の重要な支援者となっていた。