抄録
はじめに
呼吸状態が著しく低下した終末期患者の日々のケアに対して、スタッフはその経験不足から不安、疑問や葛藤がある中で緩和ケアチームの介入により患者の苦痛を緩和でき、スタッフも安心して接することが出来た事例について報告する。
症例
47歳 女性 亜急性硬化性全脳炎 18歳で発症、約30年の入院生活でADLは全介助要する経過2012年11月10日、夕食摂取中の窒息により低酸素脳症状態となった。家族は気管内挿管は希望されず、絶食、補液で加療していた。経口摂取中止し経鼻栄養にて小康状態を得たが、無呼吸、舌根沈下とあえぎ呼吸が頻回となり体位調整しながら呼吸状態の安定を図っていた。しかし、さらに呼吸状態は悪化し苦しさからか頸部拳上する筋緊張が見られていたため、頸部をクッションやタオル、チンストラップなどで無理に頭部を固定している状況で、本人にとって苦痛な体位ではないかという葛藤がスタッフに生じていた。スタッフより閉眼時は比較的努力様呼吸も見られずSpO2も安定しており鎮静をかけられないかという意見があったが、呼吸抑制を伴う麻薬や鎮痙剤の使用は躊躇され医師、看護スタッフ間では対応に苦慮していた。院内緩和ケアチームの介入を依頼し、呼吸抑制の生じる薬剤でなく抗てんかん薬で眠気誘発のある薬(クロナゼパム)を第一選択することになった。これにより、筋緊張も強く見られず頸部固定なしでSpO2の安定が図れるようになり苦痛表情が軽減した。2013.4.14状態悪化し永眠された。
まとめ
積極的な治療を希望しない終末期患者に対して、緩和ケアチームとカンファレンスを行うことで違う視点からの意見が得られ、患者の苦痛軽減に向けたケアを考えることが出来たと思う。今回の事例で、終末期の患者を看る際は段階的なカンファレンスを行うことが重要であり、主治医、看護スタッフだけでなく他科医師、薬剤師等を交えた多職種でのカンファレンスが有用であると学んだ。