日本栄養・食糧学会誌
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総説
食事リン脂質の脂質代謝調節に関する研究
(令和元年度日本栄養・食糧学会奨励賞受賞)
城内 文吾
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2019 年 72 巻 6 号 p. 247-255

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抄録

脂質は炭水化物やタンパク質よりも高エネルギーであることから, 脂質摂取は疾患発症に繋がるといったステレオタイプ的なイメージが先行してきた。最近, 食事リン脂質の有益な栄養生理機能に関する知見が集積されてきている。筆者らは, 肥満・糖尿病モデル動物のメタボリックシンドロームおよび非アルコール性脂肪性肝疾患の発症・進展に対する食事リン脂質[n-3系多価不飽和脂肪酸含有ホスファチジルコリン (n-3 PUFA-PC) , ホスファチジルイノシトール (PI)]の作用を評価してきた。これらのリン脂質摂取は, 肝臓の脂質代謝変動および脂肪組織から分泌されるアディポネクチンの血中濃度上昇を介して病態発症の予防・改善に寄与することが示された。また, 筆者らは日本人の食事中の各リン脂質クラス含量を定量し, 重回帰分析によるそれらの供給源予測を試みた。本研究の栄養素含量と国民健康・栄養調査結果の摂取量は高い一致率を示したことから, 得られた各リン脂質クラス含量は摂取量とみなすことができた。重回帰分析により一部のリン脂質クラスの供給源が明らかとなり, 推定統計学が機能性成分の供給源予測に活用できることが示された。

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© 2019 公益社団法人 日本栄養・食糧学会
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