脂質は炭水化物やタンパク質よりも高エネルギーであることから, 脂質摂取は疾患発症に繋がるといったステレオタイプ的なイメージが先行してきた。最近, 食事リン脂質の有益な栄養生理機能に関する知見が集積されてきている。筆者らは, 肥満・糖尿病モデル動物のメタボリックシンドロームおよび非アルコール性脂肪性肝疾患の発症・進展に対する食事リン脂質[n-3系多価不飽和脂肪酸含有ホスファチジルコリン (n-3 PUFA-PC) , ホスファチジルイノシトール (PI)]の作用を評価してきた。これらのリン脂質摂取は, 肝臓の脂質代謝変動および脂肪組織から分泌されるアディポネクチンの血中濃度上昇を介して病態発症の予防・改善に寄与することが示された。また, 筆者らは日本人の食事中の各リン脂質クラス含量を定量し, 重回帰分析によるそれらの供給源予測を試みた。本研究の栄養素含量と国民健康・栄養調査結果の摂取量は高い一致率を示したことから, 得られた各リン脂質クラス含量は摂取量とみなすことができた。重回帰分析により一部のリン脂質クラスの供給源が明らかとなり, 推定統計学が機能性成分の供給源予測に活用できることが示された。
ガラクトオリゴ糖 (GOS) が経口免疫療法 (OIT) の効果に及ぼす影響を検討した。Alumをアジュバンドとし, 卵白アレルギーモデルマウスを作製した。モデルマウスをNon-OIT群とOIT群, GOS群, OIT+GOS群に分け, 非感作マウスも用意した。OITは4週間とし, OITは1%卵白添加食を与え, GOSは30 mg/dを毎日強制経口投与した。アレルギー重症度は経口と腹腔負荷試験で, 制御性T細胞 (Treg) は脾リンパ球中CD4+ Foxp3+細胞比率で求めた。OIT後の経口負荷試験で, OIT群の直腸温低下はNon-OIT群より抑制されたが, OIT+GOS群は抑制されなかった。CD4+ Foxp3+細胞比率は高いほうからOIT群, OIT+GOS群, Non-OIT群であった。抗マウスCD25抗体でTregを下方制御させたモデルマウスに2週間のOITを実施しても, 経口負荷試験後の直腸温低下抑制は認められなかった。GOSをOITとの併用はOIT効果を減弱し, その現象にTregの減少が関与していると示唆された。
和食の食材として主たるものである海藻は, その摂取が推奨されているものの, ヒトを対象とした試験においてその機能性が明確にされたものは少ない。空腹時中性脂肪 (TG) 値が正常値および正常高値域からやや高めの女性10名を対象に, 乾燥カットわかめ4 gを水戻したものを摂取後にハンバーグ, フライドポテト, バターロールから成る脂質40.6 gを含む負荷食品を摂取させ, 食後の血中TG, レムナントリポタンパク質様—コレステロール (RemL-C) , 遊離脂肪酸 (NEFA) , リポタンパク質分画の測定を負荷食品摂取前, 摂取後2, 3, 4, 6時間で実施した。その結果, わかめを摂取した場合では摂取しない場合と比較し, RemL-Cやリポタンパク質Origin分画の有意な上昇抑制効果が食後4時間以降で認められ, 食後のTG値においては低下傾向が認められた。以上の結果より, わかめの摂取は同時に摂取する脂質の消化・吸収に影響を与えている可能性が示唆された。