2022 年 75 巻 6 号 p. 261-265
日本人の主食である穀物, 特に大麦と全粒小麦の摂取意義を検証するために, これら穀物に含まれる食物繊維がヒトの肥満関連指標に及ぼす影響を明らかにし, 次いで動物実験により大麦の作用メカニズムを明らかにする一連の研究を行ってきた。ヒト介入研究で明らかにした研究は以下の4項目である: (1) 食後血糖値の上昇抑制作用 (大麦ご飯, 小麦全粒粉パン), (2) 満腹感の持続作用 (大麦配合食品), (3) 内臓脂肪蓄積抑制作用 (大麦ご飯, 小麦全粒粉パン), (4) 腸内環境改善作用 (小麦フスマおよび大麦配合食品)。動物実験の結果, 高分子と低分子の大麦β-グルカンはいずれも肥満関連指標改善効果を示したが, 前者は粘性による食餌脂質の吸収抑制作用が, 後者は腸内発酵による短鎖脂肪酸の作用が主体であること, 大麦粉の耐糖能改善効果は, 短鎖脂肪酸がグルカゴン様ペプチド-1 (GLP-1) 分泌を促進したことが要因であることを証明した。