日本栄養・食糧学会誌
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総説
骨格筋機能における遺伝子発現制御に関する研究
(令和4年度日本栄養・食糧学会学会賞受賞)
亀井 康富
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2022 年 75 巻 6 号 p. 267-274

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抄録

骨格筋はヒトの体重の約40%を占める人体で最大の組織であり, タンパク質の形でエネルギー貯蔵を行っている。骨格筋は環境の変化に順応する可塑性があり, 適切な運動トレーニングと十分な栄養によって肥大し, 寝たきりや加齢などによって萎縮する。筋萎縮が生じると, エネルギー消費減少 (肥満) や, 糖取り込み能の低下・血糖値上昇 (糖尿病), そして生活の質の低下へと向かう。FOXO1は筋萎縮を誘導する主要な転写調節因子であり, 作用機序の理解が進んでいる。一方, 運動の作用は, 骨格筋だけにとどまらず, さまざまな臓器に影響する。運動時におけるPGC1α (核内受容体の転写共役因子・転写調節因子) によるミトコンドリアの増加や赤筋化など, 筋機能改善に関する代謝変化の分子機序が明らかになりつつある。本稿では, 筆者らの研究データも含めて, 骨格筋機能における遺伝子発現制御について整理する。

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© 2022 公益社団法人 日本栄養・食糧学会
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