日本栄養・食糧学会誌
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総説
骨格筋と腸のクロストーク“筋腸連関”からみる代謝,運動の機能制御
青井 渉
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2023 年 76 巻 5 号 p. 305-312

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抄録

骨格筋は血液中から取り込んだ栄養素を代謝し, エネルギーを産生するとともに, 構成タンパク質を合成することで身体活動を支持する。また, 骨格筋は生理活性物質マイオカインを分泌することで全身の機能に干渉する分泌臓器としての役割が知られるようになった。マイオカインは, 腸のホルモン分泌や免疫, 発がんリスクに影響を与え, 運動による生理機能の応答, 適応, ひいては健康効果とも密接に関係することが示唆されている。一方, 骨格筋の代謝能は, 腸に由来する様々なシグナルによって干渉を受ける。腸は栄養素の消化・吸収を担い, 基質の供給に寄与する一方で, 体内への異物進入を防御することにより過剰な炎症応答, 代謝攪乱を防いでいる。また, 腸内細菌から産生される物質が, 直接あるいは間接的に代謝を制御することもわかってきた。そのため, 健全な腸機能を維持することは, 骨格筋の代謝を制御し, 疾患やフレイルの予防に寄与するとともに, 運動機能の維持・向上において重要である。骨格筋と腸のクロストーク“筋腸連関”のサイエンスは新しい食, 運動の捉え方につながる。

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