2023 年 76 巻 6 号 p. 391-401
高血圧予防のための行動変容において, 減塩のみには限界がある。食塩摂取目標量までの減塩が難しい時に, 増カリウム (K) 食を取り入れ, ナトリウム (Na) とKの摂取バランスを整えることが血圧管理に有効となり得るか, 血圧との正の相関が知られている尿Na/K比を指標に検証した。若年女性を対照食群, 減塩食群, 増K食群に分け, 各試験食を1日3食, 2週間摂取してもらい, 摂取期間前後に24時間蓄尿のNa/K比を測定した。なお, 対照食は現状から目標量に向け50%程度減塩した食 (Na 3,277 mg), 減塩食は目標量まで減塩した食 (Na 2,559 mg), 増K食は対照食を基にKをNaと同程度まで増量した食 (K 3,277 mg) とした。その結果, 増K食群では尿Na/K比が有意に低下した (2.8±1.2→1.9±0.6) 。減塩食では平均値は下がったが有意な変化ではなかった (3.2±2.0→2.5±1.0) 。摂取期間前の尿Na/K比が2以上の者を対象に3群間の比較をした結果, 増K食群は対照食群と比べ摂取期間前後の尿Na/K比の低下量が有意に大きかった。したがって, 減塩のみならず, 増K食の利用も尿Na/K比の改善, ひいては高血圧予防に有効と示唆された。