日本栄養・食糧学会誌
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総説
慢性炎症による肥満・糖尿病・食後高脂血症の増悪化メカニズム
―慢性炎症が引き起こす脂質代謝異常の食品成分による予防・改善―
高橋 信之高橋 尚子森本 洋武井上 博文後藤 剛河田 照雄上原 万里子
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2024 年 77 巻 2 号 p. 109-115

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抄録

肥満に伴う白色脂肪組織での慢性炎症は, 白色脂肪細胞においてインスリン抵抗性を引き起こし, 糖尿病の原因となることが明らかとなっている。また近年, 脂肪消費により得られたエネルギーを熱に変換する機能を持った褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞における熱産生能を慢性炎症が阻害することで, 肥満状態を悪化させる可能性も明らかとなった。さらに腸管における慢性炎症が, 動脈硬化性疾患発症リスクである食後高脂血症の悪化をもたらすことが示唆されている。このように, 生体内での慢性炎症が脂質代謝異常を引き起こし, 様々な生活習慣病の発症に関わっている。このことは慢性炎症を抑える作用, すなわち抗炎症作用を持つ食品成分を摂取することで, 日々の食事による脂質代謝異常の予防・改善が期待できることを意味している。そこで本稿では, 慢性炎症による脂質代謝異常のメカニズムならびに抗炎症作用の食品成分による改善効果について概説する。

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