日本栄養・食糧学会誌
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総説
時間栄養学の視点で考える栄養管理:高齢者の朝食のたんぱく質の質に着目した疫学研究より
木下 かほり
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2025 年 78 巻 2 号 p. 107-113

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抄録

高齢者の健康増進に食生活は重要である。時間栄養学では, 体内時計を意識した食事を通して疾病を予防し, 健康寿命延伸をめざす。ヒトの概日リズムは地球の24時間周期より長いため体内時計のリセットが必要であり, 食事はそのリセットを担う。高齢者の筋力を高く保つことが介護予防に重要であるが, 時計遺伝子は骨格筋にも存在し, とくに朝食で多くのたんぱく質を摂取すると骨格筋でのたんぱく質合成が高まることが報告されている。しかし, 高齢者では加齢に伴い食事摂取量が減少するため十分なたんぱく質を摂取することが難しい場合もある。我々はたんぱく質の質 (つまり生物学的利用能) に着目し, 地域在住高齢者においてたんぱく質の質が高い朝食をとっている者ほど, 将来, 筋力が低下しにくいことを明らかにしている。高齢者に推奨される栄養摂取量についてエビデンスが乏しいという背景を踏まえたうえで, 時間栄養学的視点から高齢者の栄養管理について考える。

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