2025 年 78 巻 3 号 p. 131-137
近年の脂肪組織の生物学の進歩により, 脂肪組織は従来考えられていたような余剰エネルギーを貯蔵するための単純な臓器ではなく, エネルギー状態の変化に伴うエネルギー出納・代謝とアディポカインの分泌などの機能により全身の代謝制御を担う, より複雑な臓器であることが明らかとなってきた。インスリンは, 脂肪組織の機能制御の多くの局面で中心的な役割を担うことから, 脂肪組織におけるインスリン感受性は, 全身の代謝制御に関わる重要な因子と考えられている。本稿では, PDK1をはじめとするインスリンシグナル分子の組織特異的遺伝子改変マウスを用いた最近の研究から明らかとなってきた白色脂肪細胞による代謝調節メカニズムの新たな知見を中心に概説する。