2025 年 78 巻 4 号 p. 221-227
モリンガ (Moringa oleifera) は, 北インド原産の樹木であり, 赤道周辺の熱帯・亜熱帯地域に広く分布・栽培されている。その葉や根, 種子は, インドや東南アジアで古くから食用・薬用に利用されてきた。日本では, 2006年に熊本県天草地方で初めて栽培が開始され, 現在では九州・南西諸島地域を中心にその栽培域が拡大している。モリンガは耐寒性に乏しく, 国内では毎年植え替えによる周年栽培が行われている。我々は, 1年目の若葉の収穫時期および乾燥処理方法に工夫を加えることで, 高品質な九州産モリンガ製品の差別化を図ってきた。本総説では, モリンガのこれまでの研究成果を概観し, とりわけ栄養機能性および生理機能性に焦点を当てて論述する。加えて, on-line HPLC-DPPH法を用いた分析により, 九州産モリンガ葉に含まれる主要な抗酸化成分がクロロゲン酸類であることを明らかにし, 抗酸化能に優れた「バージンモリンガ」を開発・商品化した事例を紹介する。さらに, モリンガを活用した機能性表示食品の開発動向と, 今後の実用化に向けた展望についても述べたい。