日本栄養・食糧学会誌
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総説
宇宙環境で生じる健康問題への挑戦
─栄養学的アプローチから─
池田 泰隆
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2026 年 79 巻 2 号 p. 161-168

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抄録

宇宙環境は微小重力や宇宙放射線などの極限環境により, ヒトの生理機能に急速な老化様変化を引き起こすことが知られている。これらの変化の中心にはミトコンドリア機能不全とATP産生低下があり, 地上の老化現象と共通する分子基盤を示す。本研究では, 老化を「エネルギー代謝の破綻」と捉える新しい視点を提示し, 慢性的低酸素によるHIF-1α安定化と好気的代謝抑制がATP枯渇を招く連鎖を明らかにした。さらに, 低酸素環境に適応する高地民族の食文化に着目し, フラボノイドの一種ケンフェロール (kaempferol: KMP) に辿り着いた。細胞試験, 動物試験, 臨床試験により, KMPはHIF-1α制御を介して好気的代謝を再活性化し, ATP産生を促進することを確認した。宇宙環境模擬条件下でのマウスおよびオルガノイド試験でも, KMPは臓器機能低下を抑制した。今後, 宇宙飛行士対象試験や個別化栄養への応用が進展すると見込まれ, 「エネルギーの視点から老化と健康を再定義する」パラダイムの基盤と成り得る。

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