これまで地球低軌道を周回する宇宙船で, 宇宙環境が植物の成長に及ぼす影響や宇宙で植物を育成するための環境制御法などの研究が行われてきた。とりわけ, 地球重力に適応して進化した植物の重力応答のしくみを理解するために, 宇宙は微小重力環境を提供する貴重な実験室である。例えば, われわれのキュウリを用いた宇宙実験は, 芽生えの重力形態形成と根の水分屈性の制御機構解明の糸口をもたらした。今日, これまでの地球低軌道上での宇宙実験の成果を踏まえ, 月や火星の有人探査が活発化し, 2030年には人類が月面に長期滞在すると予想されている。そのためには, その場での食料の生産・供給が必須とされ, 人工光型植物工場の宇宙版が検討されている。遠い宇宙で作物を生産するためには, その場の重力や宇宙放射線や太陽光を含む宇宙複合環境が植物の成長に及ぼす影響を理解し, 宇宙植物工場に適した新作物を作出すると同時に, 高効率な栽培技術と限られた資源を再生・循環させる技術の開発が不可欠である。