抄録
ワラビ粘質物を磨砕した若い葉柄の水抽出液からアルコールおよびエーテルによって分離し, ペーパークロマトグラフィーおよびその他の検出法により, その構成成分の検索同定を試みた結果次の事実を明らかにした。
(1) 粘質物の主要成分は炭水化物であって, それは比較的多量のフコース, キシロース, ガラクトースとやや少量のリボース, アラビノース, マンノースおよびグルクロン酸から溝成されている複雑な多糖類と考えられる。
(2) 粘質物の窒素含量は1.15%で, その構成アミノ酸としてアスパラギン酸, グルタミン酸, グリシン, アラニン, チロシン, プロリン, バリン, ロイシンおよび3種のニンヒドリン陽性物質が確認され, また蛋白質呈色反応ならびに金属塩との沈澱反応などから, 粘質物は一種のムコ多糖類であろうと考えられる。
(3) 粘質物は約10%の灰分を含み, その大部はカルシウムとマグネシウムであり, そのほか少量のナトリウムとカリウムを含んでいた。そしてこれらの金属は粘質物とイオン結合しているものと推測される。