栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
白ネズミ血漿のコレステロールエステル化反応におよぼす蔗糖食の影響
白ネズミ血漿のレシチン: コレステロールアシルトランスフェラーゼにおよぼす食餌因子 (第2報)
堀 康二福田 亘博藤田 修二菅野 道廣
著者情報
ジャーナル フリー

1973 年 26 巻 8 号 p. 479-486

詳細
抄録

ブドウ糖あるいは蔗糖を唯一の糖質源として65.85%含む飼料をウィスター系雄白ネズミに与え, in vitroにおける血漿のレシチン: コレステロールアシルトランスフェラーゼ (LCAT) の活性および脂肪酸特異性を比較した。
14日間の蔗糖食で血漿のトリグリセリド (TG) 濃度は著しく増加し, リン脂質濃度も増加の傾向にあった。 LCAT活性は蔗糖食で低下した。 これは血漿中の酵素活性そのものの低下がおもな原因と考えられたが, 基質の変化も無視できないことが示唆された。 LCAT反応で新しく生成された各コレステロールエステルの割合 (脂肪酸特異性) にいくらかの変化が認められ, 蔗糖食でオレイン酸エステルの生成割合が高くなった。 しかしながらこれは基質の影響によるもので, LCAT自身の脂肪酸特異性は変化していないことを示す結果が得られた。
2日絶食後2日間再絶食させた実験では, ブドウ糖食と蔗糖食のLCAT活性には差が認められなかった。 しかし, 市販固型飼料の再摂食にくらべ両糖質の再摂食では活性が低下した。 さらに, オレイン酸エステルの生成割合が増加したが, その増加は蔗糖食再摂食で著しかった。 これらの変化は基質となるリポたん白質の変化と酵素自身の性質の変化によるものであることを示す結果が得られた。
血漿TG濃度とLCAT活性の間には相関関係がありTG濃度の増加はLCAT活性を低下させるようであった。 これはLCAT反応と血漿TGの代謝とは密接な関係があることを示すものと考えられる。
これらの結果は白ネズミ血漿のLCAT活性と脂肪酸特異性が飼料中の炭水化物の種類と投与方法の相違によって異なった影響を受けることを示した。 また, 血漿中のLCATとリポプロテインリパーゼは相互に密接な関連をもち, 血漿コレステロールエステルとTGの代謝に関与していることを推察した。

著者関連情報
© 社団法人日本栄養・食糧学会
前の記事 次の記事
feedback
Top