日本栄養・食糧学会誌
Online ISSN : 1883-2849
Print ISSN : 0287-3516
ISSN-L : 0287-3516
微量元素欠乏ラットの発育, 血液性状, 病理組織像, および創傷治癒に及ぼす鉄, 亜鉛, 銅, ヨウ素含有栄養輸液の影響
菊地 武夫岡本 博夫大堀 昭子石川 喜代子
著者情報
ジャーナル フリー

1983 年 36 巻 4 号 p. 273-281

詳細
抄録

鉄, 亜鉛, 銅, ヨウ素の各元素が欠乏した飼料を1.5%L-ヒスチジン水とともに9週間摂取させ, 微量元素欠乏モデルラットとした。このラットに微量元素欠乏飼料 (A群), 微量元素不含の完全静脈栄養輸液 (B群), あるいは鉄, 亜鉛, 銅およぴヨウ素を添加した完全静脈栄養輸液 (C群) を1週間投与し, ラットの体重変化, 窒素出納, 血液性状, 組織検査および創傷治癒成績から微量元素補給効果を評価した。なお対照として市販の固型飼料を摂取させた同週齢のラット (D群) を設け, 比較検討し次の結果を得た。
(1) 体重, 窒素出納には微量元素添加の効果を見いだせなかった.
(2) 血漿中鉄, 亜鉛, 銅, タンパク結合ヨウ素濃度はD群に比べてB群で低値を示し, C群で回復した。
(3) 亜鉛酵素であるalkaline phosphataseはD群に比しA, B, C群で低値を示し, とくにB群でその低下が著明であった。Hb値, Hct値はD群に比べてA, B群では低値を示したが, C群では正常値に復す傾向を認めた。
(4) A, B群の大腿骨組織で骨髄に低形成が認められ, C群では回復した。一方, C群において脾臓に髄外造血像を認めた。
(5) 創傷治癒過程はD群に比べてA, B群で遅延, C群でそれが回復する傾向にあった。
以上より, 潜在的あるいは顕在的微量元素の欠乏状態にあるラットに微量元素不含の完全静脈栄養法を施行すると欠乏症状がいっそう助長され, 一方, 鉄, 亜鉛, 銅およびヨウ素を含有する栄養輸液によりこれらの症状は予防, 回復することが明らかとなった。

著者関連情報
© 社団法人日本栄養・食糧学会
前の記事 次の記事
feedback
Top