日本栄養・食糧学会誌
Online ISSN : 1883-2849
Print ISSN : 0287-3516
ISSN-L : 0287-3516
胃全摘, あるいは75%小腸切除ラットの窒素代謝におよぼす食餌性窒素源形態の影響
中坊 幸弘山田 かよ子萩平 博
著者情報
ジャーナル フリー

1985 年 38 巻 1 号 p. 57-62

詳細
抄録

胃全摘術, あるいは75%小腸下部切除術を施したラットに, 同一窒素源とみなせるカゼイン, カゼインのトリプシン消化産物 (平均重合度2~3), あるいはカゼイン類似アミノ酸混合物を含む食餌を投与し, 窒素源形態の違いが術後ラットの窒素代謝におよぼす影響を比較, 検討した。
その結果は, 次のとおりであった。
1) 術後6日目からの自由摂食8日間の体重増加は, 各手術群とも, アミノ酸混合物食で, やや少なくなったが, 各窒素源形態間に統計的有意差は認められなかった。
2) 体重100g当たりの肝臓, および腎臓重量は, いずれの食餌群間にも有意差を認めえなかった。しかし, 盲腸重量はアミノ酸混合物食で重く, 胃全摘ラットよりも小腸切除ラットのほうが, いずれの食餌でも重くなる傾向がみられた.
3) いずれの手術ラットも, ヘマトクリット値, 血漿総タンパク質濃度, およびA/Gは, 窒素源形態によって有意な影響がみられなかった。 血漿尿素濃度は, 胃全摘ラットよりも小腸切除ラットのほうが有意に高値を示し, カゼイン食やアミノ酸混合物食の摂取でその傾向は増大した。
4) 術後11日目から3日間測定した窒素出納試験では, 胃全摘ラットの窒素出納は, いずれも正で窒素源形態の違いによって, 窒素保留量に有意差は認められなかった。 75%小腸切除ラットの窒素出納も, いずれの窒素源形態も正値となっていたが, 窒素保留量は低分子ペプチッド摂食で高値であった。
両手術群ラットとも, 窒素のみかけの消化吸収率は低分子ペプチッドのとき, 高値となった。 アミノ酸混合物摂取によって, 尿中アンモニア割合の上昇と, 尿素割合の減少するのが観察された。

著者関連情報
© 社団法人日本栄養・食糧学会
前の記事 次の記事
feedback
Top