日本栄養・食糧学会誌
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ラット肝アルコール脱水素酵素活性の部位差, 性差および発育差
立屋敷 かおる今泉 和彦荻田 善一
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1987 年 40 巻 3 号 p. 207-212

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抄録

S.D. 系ラットの肝臓におけるアルコール脱水素酵素 (ADH) の比活性値とタンパク質濃度に対する部位差, 性差および発育差を定量的に検討した。
1) 肝ADHの比活性値とタンパク質濃度は, 左臓側葉等の容積の大きい部位で高値をとる。一方, 尾状突起や乳頭突起等の容積の小さい部位では, 左臓側葉における両値に比べて約30~40%低い。したがって, 肝におけるADHの比活性値は部位差がある。
2) 同一週齢のラットにおけるADHの比活性値は, 雄に比べて雌が約2.0倍大きい。また, みかけの肝ADH総活性値も, 雌が雄に比べて約1.5倍大きい。したがって, 肝におけるADHの両活性は, 性差が著明に認められる。
3) 肝ADHの比活性値は, 生後3~12日目まで直線的に増加し, その後はプラトーに達する。したがって, 比活性値は生後約2週間でほぼ成体レベルに達する。みかけの肝ADH総活性は, 生後日数に対してS字形に増加する。ラットの肝ADHのKm値は, NADおよびエタノールに対して生後3~215日の範囲で変化が認められない。以上より, 発育に伴う肝ADHの活性の変化は, 両基質に対する親和性によらず, 酵素の比活性の変化によると考えられる。

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