日本栄養・食糧学会誌
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茶カテキンの抗腫瘍作用
原 征彦松崎 敏中村 耕三
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1989 年 42 巻 1 号 p. 39-45

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抄録

緑茶に固有なカテキンであるエピガロカテキンガレート (EGCg) と, それを主成分とする粗カテキンを用い, これらがマウスおよびラットに移植された腫瘍の増殖に対し抑制効果をもつか否かにつき調べた。腫瘍細胞としてはSarcoma 180, Ehrlich, P-388およびL-1210を用い, それらをマウスに移植し, 腹水腫瘍もしくは固型腫瘍とした。さらに20MC誘導腫瘍片をラットに移植して実験に供した。EGCgおよび粗カテキンは腹腔内, 皮下, 経口 (強制または混餌) により投与した。
その結果, EGCgおよび粗カテキンは腹水腫瘍に関しては効果を示さなかったが, いくつかの固型腫瘍に対しては増殖抑制効果を示した。すなわち両者とも, マウスEhrlichに対しては移植後の皮下投与で, 20MC腫瘍に対しては移植後の腹腔内投与で, それぞれ対照群に比べ腫瘍の増殖を抑えた。そして粗カテキンの場合20MC腫瘍移植前に経口投与を加えることにより抑制率が倍増した。Sarcoma 180に対しても, 粗カテキンは腹腔内投与による腫瘍増殖抑制効果とともに移植前経口投与による効果増強を示した。そこで移植腫瘍に対する粗カテキン長期摂食の効果を調べた。マウスを粗カテキン添加飼料で8.5カ月間飼育し, Sarcoma 180を皮下移植し, ひき続き19日間飼育後の腫瘍重量を計ったところ, 粗カテキン0.5%混餌群では29.1%, 1%混餌群では55.8%, それぞれ対照群に比べて腫瘍重量減がみられた。さらにその機作の確認のため, マウスにSarcoma 180移植後粗カテキンを皮下投与し, その後LPSを腹腔内投与したところ, おのおのの単独投与より優れた抑制効果が得られた。
以上の諸知見から, EGCgおよびそれを主成分とする粗カテキンは, 移植腫瘍細胞の増殖過程に直接作用するというよりはむしろ, 生体の免疫機構に働いて腫瘍の増殖を抑制するという可能性が示唆された。
なお本報の一部は第43回日本癌学会総会において発表した。

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